オンボーディングは新入社員が効果的に業務に参加し、会社文化に適応する過程です。
しかし、多くの人事担当者はオンボーディングの手法に困っています。
この記事では、その悩みを解決するためのオンボーディングツールとその選び方について詳しく解説します。
目次
リテンションの基本的な定義
人事領域での定義
リテンションとは、主に従業員が企業に長く勤務することを促す一連の戦略と施策を指します。具体的には、離職率を低く抑えるための様々な取り組みが含まれます。
人事以外の領域での定義
一方で、マーケティングや顧客管理(CRM)の領域では、リテンションは顧客がブランドやサービスと継続的な関係を持つことを目的としています。
リテンションが注目される背景
近年、人手不足と高い離職率が企業にとって大きな問題となっています。
特に新入社員の早期離職は、採用コストと研修コストの無駄につながるため、その防止が急募されています。
また、熟練した従業員が去ることで生じるノウハウの喪失も計り知れない損失です。
リテンションの計測方法
リテンションを計測するための主な指標は、以下の通りです。
- 離職率
特定の期間内で退職した従業員数を全従業員数で割った値。 - 在籍期間
従業員が企業に在籍する平均期間。 - 従業員エンゲージメント
アンケートやフィードバックから測る、従業員が仕事にどれだけエンゲージしているか。
リテンションを高めるためのキーファクター
リテンションを高めるには、以下のようなキーファクターが考えられます。
- キャリアパスの明確化
従業員が会社で働くモチベーションを高めるためには、将来のキャリアパスが明確であることが重要です。
これには、定期的な1対1のキャリア面談、専門スキル向上のための研修プログラム、昇進や異動に関する明確なガイドラインが必要です。
施策例
新入社員研修でキャリアゴール設定のワークショップを行う
メンタリングプログラムを設けて、経験豊富な社員がキャリアアドバイスを提供する - フェアな評価と報酬
働きがいを感じてもらうためには、その努力と成果が公平に評価され、適切に報酬される必要があります。
評価基準やKPIを明確にし、これを全社員で共有することが基本です。
施策例
定期的なパフォーマンスレビューを行い、それに基づいて給与調整を行う - 優れた成果を上げた社員に対するボーナスや表彰制度を設ける
仕事とプライベートのバランス
良いリテンションを維持するためには、従業員がプライベートの時間も充実させられるよう配慮が必要です。
フレキシブルな労働時間、リモートワークの導入などが考えられます。
施策例
コアタイムを設けつつ、その他の時間はフレキシブルに働ける制度を導入する
有給休暇の取得推進キャンペーンを行う - 社内コミュニケーション
良いアイデアや改善点は、オープンなコミュニケーションが交わされる場で生まれやすいです。
そのためには、社内チャットツールの導入、定期的な全社員ミーティングなどが有効です。
施策例
SlackやTeamsなどの社内コミュニケーションツールを全員で利用する
月一で全社員が参加するタウンホールミーティングを開催する - 従業員のスキルと業務のマッチング
従業員一人ひとりが持つスキルセットと業務内容がうまくマッチするように人員配置を考えることで、効率が上がります。
施策例
スキルセットと業務内容をマッピングする表を作成し、人事評価と連動させる
社内のプロジェクトに自由に参加できる制度を作ることで、従業員が自分でスキルと業務をマッチさせる機会を提供する
以上がリテンションを高めるためのキーファクターとその詳細です。
これらのポイントは一つ一つが独立しているわけではなく、相互に関連しています。
そのため、総合的な戦略としてこれらの要素を組み合わせることが最も効果的です。
企業事例:リテンションを高めた成功事例
Salesforce:従業員の健康と幸福を最優先
Salesforceは、社員に1対1のコーチングやメンタリング、無制限の有給休暇、そしてボランティアの機会を提供しています。
このような戦略によって、Salesforceは従業員のリテンションを高め、業界で最も働きがいのある企業の一つとされています。
企業事例:リテンションが低かった失敗事例
XYZ社:不明確な評価基準と低い報酬
XYZ社は、不明確な評価基準と低い報酬のため、優秀な社員を次々と失いました。
結果として、プロジェクトが遅れ、収益が減少するなど、企業全体が苦境に立たされました。
リテンション向上のためのポイント
- オンボーディングプロセスの強化
新入社員が職場文化に素早く適応できるように、オンボーディングプロセスをしっかりと設計することが重要です。
最初の数週間での印象が、長期的なリテンションに影響を与える場合が多いです。 - メンターシッププログラム
新入社員や若手社員に対して、経験豊富な社員が一対一で指導やアドバイスを行うプログラムを設けることで、社員のスキル向上とモチベーションを高めます。 - キャリアデベロップメントプラン
社員一人ひとりに対して、キャリアパスを明確にし、定期的なフィードバックとともにプロモーションや新しいプロジェクトへの参加機会を提供します。 - ワークライフバランスの尊重
柔軟な勤務形態を提供することで、社員のストレスを減らし、仕事とプライベートのバランスを取りやすくします。
これによって、社員の満足度が上がり、リテンションも向上します。 - 従業員エンゲージメント調査
年に一度、従業員の仕事に対する満足度やモチベーションレベルを測るアンケートを実施します。
その結果をもとに、組織全体で改善するポイントを特定します。 - 福利厚生の充実
健康保険、退職金制度、子育て支援など、社員が働きやすい環境を整えることもリテンション向上に貢献します。 - オープンコミュニケーション
社員からのフィードバックを常に歓迎し、その声を組織の改善に生かす文化を作ることが重要です。
オープンで透明なコミュニケーションが行われる企業は、社員が長く在籍する傾向にあります。
以上のような施策は、社員が企業に長く在籍する確率を高めるために非常に有用です。
これらの施策は一度設定したら終わり、ではなく、定期的に見直しを行い、社員のニーズに応じて調整することが必要です。
リテンション管理のためのツール紹介
Workday: 人材管理、給与計算、パフォーマンス管理などが一体化されたプラットフォーム。
15Five: 定期的なフィードバックと1対1のミーティングを効率化するツール。
詳細はこちらの記事で詳しくまとめておりますので、ご参照ください。
関連記事:人事領域におけるリテンションとは?離職防止ツールおすすめ16選
小規模企業でもできるリテンション対策
小規模企業は、資源や予算が限られている場合が多いですが、それでも効果的なリテンション対策は可能です。
以下に、小規模企業でも手軽に取り組める方法をいくつか紹介します。
- インフォーマルな1対1のミーティング
定期的に上司と部下が一対一で話す時間を設けることで、社員が抱える問題や不満を早期に発見し、解決に取り組むことができます。 - フィードバック文化の構築
毎週のチームミーティングで「今週のヒーロー」を選出するなど、良いパフォーマンスや貢献を即時に称賛する文化を作りましょう。 - クロストレーニング
同じ小規模企業内で多様なスキルを持つ人材がいれば、それぞれの専門性を高めるためにクロストレーニング(他の職種や部署での研修)を行うことが有用です。 - 社内コミュニケーションツールの活用
SlackやMicrosoft Teamsなどのコミュニケーションツールを活用して、社内コミュニケーションを活性化させます。 - フレックスタイム制度
全員が同時に出勤する必要はないかもしれません。フレックスタイム制度を導入することで、社員がライフスタイルに合わせた働き方を選べるようにします。 - 在宅勤務の導入
必要な職務を在宅でこなせる場合、在宅勤務を導入して、社員のワークライフバランスを支援します。 - コミュニケーションを促進する社内イベント
月に一回の社内ランチや誕生日会など、小規模ながらも社員が楽しみにできるイベントを設けることで、チームの結束力を高めます。 - 社員の成長を支援する小さなプロジェクト
社員がスキルセットを広げる機会を作るために、新しいプロジェクトやタスクを任せて成長を促します。
これらの対策は、特に予算をかけずに行えるものが多いです。
小規模企業でもリテンションを高めるためには、社員が働きやすい環境を作ることが最も重要です。
それによって、社員が企業に対するロイヤルティを感じ、長期間在籍してくれる可能性が高まるでしょう。
まとめ
リテンション向上は企業の成長と直結する重要な要素です。
特に人事担当者にとって、社員が長期間在籍してくれるかどうかは、その企業が健全で成長している証です。
上記の成功事例や失敗事例、具体的な施策などを参考に、ぜひとも効果的なリテンション戦略を練ってみてください。