組織の成長を促進する上で、社員のエンゲージメント(仕事への情熱やコミットメント)は重要な要素と言われています。
しかし、その具体的な状況を把握するのは簡単なことではありません。
ここで登場するのが「エンゲージメントサーベイ」です。
この記事では、エンゲージメントサーベイの目的や方法、さらにその効果や課題といった要点について詳しく解説します。
組織の成長を目指す人事責任者の方々への参考となれば幸いです。
目次
●エンゲージメントサーベイとは
●エンゲージメントを測る主な要素
・仕事への満足度
・上司や同僚との関係性
・ワークライフバランス
・職場の環境
・成長機会
●エンゲージメントサーベイの実施手順
1. 目的の設定
2. 質問項目の設定
3. サーベイの実施
4. 結果の分析
5. 結果のフィードバックと改善策の立案
●エンゲージメントサーベイの質問項目の設定
・シンプルで明瞭な言葉を使う
・具体的な状況を想定した質問をする
・ポジティブな表現を用いる
・6段階評価など、数値で答えられる形式にする
●エンゲージメントサーベイの結果分析
●結果をフィードバックとして活用する方法
●結果を改善策に反映させる方法
●エンゲージメントサーベイの繰り返しとその重要性
●エンゲージメントサーベイの効果
●エンゲージメントサーベイの課題とその対策
1. サーベイの参加率
2. 匿名性の保持
3. 結果の活用
●まとめ
エンゲージメントサーベイとは
企業が成長を続けるためには、社員一人ひとりが仕事に対して高い情熱を持ち、自発的に行動することが求められます。
これを「エンゲージメント」と呼びます。エンゲージメントが高まると、組織全体の生産性や創造性が向上し、結果的に企業のパフォーマンスを高めるとされています。
では、このエンゲージメントをどのように把握し、高めていくのでしょうか。その手段として、「エンゲージメントサーベイ」があります。
エンゲージメントサーベイは、企業が社員のエンゲージメントを把握し、その結果をもとに組織の改善を図るためのツールです。
社員自身の仕事に対する満足度やモチベーション、上司や同僚との関係性、職場環境など、様々な観点からエンゲージメントの状況を測定します。
エンゲージメントを測る主な要素
エンゲージメントを測る要素は多岐にわたりますが、主なものには以下のようなものがあります。
- 仕事への満足度
社員が自身の仕事に対してどれだけ満足しているか、仕事の内容やその成果を価値あるものと感じているかが問われます。
これには、具体的な業務内容、進行中のプロジェクト、仕事の難易度などが関わります。 - 上司や同僚との関係性
社員が上司や同僚とどれだけ良好な関係を築いているか、また、その関係性が仕事の遂行にどれだけ寄与しているかが問われます。
この項目では、上司や同僚とのコミュニケーション、チームワーク、互いの尊重の度合いなどが考慮されます。 - ワークライフバランス
社員が仕事と私生活のバランスを保つことができているか、また、企業がそのバランスを維持するための支援をどれだけ提供しているかが問われます。
労働時間、休暇、ストレスの管理、リモートワークなどの柔軟な働き方などが対象となります。 - 職場の環境
物理的な職場環境だけでなく、社風や文化、安全性など、働く環境全体がどれだけ快適で生産的なものであるかが問われます。 - 成長機会
社員が自身のスキルを向上させたり、キャリアを発展させたりするための機会がどれだけあるかが問われます。
研修や教育の機会、昇進の道、キャリア開発のサポートなどが含まれます。
これらの要素が社員のエンゲージメントに影響を与え、結果的に企業のパフォーマンスに寄与します。
エンゲージメントサーベイの実施手順
エンゲージメントサーベイの実施にあたっては以下の手順を参考にしてみてください。
- 目的の設定
エンゲージメントサーベイを行う目的を明確にします。
目的は、職場環境の改善、社員の満足度の向上、生産性の向上など、具体的で明確なものであると良いでしょう。 - 質問項目の設定
エンゲージメントサーベイの質問項目は、設定した目的に合わせて作成します。
質問は明確で簡潔なものにし、二重否定などの混乱を招く表現は避けると良いでしょう。 - サーベイの実施
サーベイの実施は、全社員が参加できるようにします。
また、社員が自由に意見を述べられるよう、匿名性を保つことが重要です。 - 結果の分析
収集したデータを分析し、エンゲージメントの状況を理解します。
結果は、部署別、役職別、年齢別など、さまざまな角度から分析することで、具体的な問題点や改善すべきエリアを把握することが可能となります。 - 結果のフィードバックと改善策の立案
エンゲージメントサーベイの結果は、社員にフィードバックし、改善策を立案します。
結果を共有することで、社員の理解と協力を得ることが可能となります。
このように、エンゲージメントサーベイは計画的に実施し、結果を組織の成長に活用するためのプロセスを持つことが重要と考えられます。
エンゲージメントサーベイの質問項目の設定
質問項目を設定する際は、以下のポイントを考慮することがおすすめします。
- シンプルで明瞭な言葉を使う
質問は、社員が直感的に理解できるような、シンプルで明瞭な言葉を用いて作成することが重要です。
専門的な用語や複雑な表現は避け、社員全員が容易に理解できる表現を選ぶと良いでしょう。 - 具体的な状況を想定した質問をする
抽象的な質問よりも、具体的な状況や行動を想定した質問の方が、より精緻なフィードバックを引き出すことができます。
例えば、「チームと協力して仕事を進められていますか?」という質問よりも、「あなたの意見がチームで尊重されていますか?」と具体的に尋ねる方が、より具体的な経験に基づく回答を得られます。 - ポジティブな表現を用いる
質問はポジティブな表現を用いて作成しましょう。
否定的な表現を使うと、社員の心理的防衛を引き起こす可能性があり、真実を反映した回答を得られない可能性があります。
また、ポジティブな表現を使うことで、改善点だけでなく強みや良い点も明確にすることができます。 - 6段階評価など、数値で答えられる形式にする
5段階評価など、数値で答えられる形式にすることで、結果を定量化しやすくなります。
また、数値を使うことで、社員が自分の感じ方をより正確に表現しやすくなります。
また、例えば5段階評価など選択肢が奇数の場合「どちらでもない」にあたる中央値を選択してしまいがちなため、評価段階数を偶数にすることで「どちらか寄りである」という点は取得できるよう設計することをおすすめします。
これらのポイントを踏まえた上で、エンゲージメントを測る各要素(仕事への満足度、上司や同僚との関係性、ワークライフバランス、職場の環境、成長機会など)についての質問項目を設定します。
この際、企業の特性や課題に応じて、質問項目をカスタマイズすることも重要です。
エンゲージメントサーベイの結果分析
サーベイの結果は、個々の質問項目の得点だけでなく、全体的な傾向やパターンを分析することで、より深い洞察を得ることが可能です。
結果をフィードバックとして活用する方法
結果を社員にフィードバックする際には、透明性を保ちつつも、個々の感情を尊重することが大切です。
結果を共有し、改善策についてのオープンな議論を促すことで、組織全体のエンゲージメント向上につなげることが可能です。
結果を改善策に反映させる方法
サーベイの結果を元に、具体的な改善策を立案し、実行に移すことが大切です。
その際、改善策が全ての社員にとってフェアであること、また、そのプロセスが透明であることを心掛けてください。
エンゲージメントサーベイの繰り返しとその重要性
エンゲージメントサーベイは一度きりのものではありません。
定期的に実施することで、組織の変化を把握し、その都度改善策を考えることができます。
これにより、組織の持続的な成長を促進することが可能となります。
エンゲージメントサーベイの効果
エンゲージメントサーベイを適切に実施し、結果を活用することで、さまざまなポジティブな効果が期待できます。
社員のモチベーション向上、生産性の向上、離職率の低下など、組織全体の活性化に寄与する可能性があります。
具体的な改善策の実行により、社員の働く環境が良くなれば、それが結果的に組織のパフォーマンス向上につながると言われています。
エンゲージメントサーベイの課題とその対策
しかし、エンゲージメントサーベイを実施する上での課題も存在します。以下に主なものを挙げ、その対策についても考えてみましょう。
- サーベイの参加率
全社員の声を反映させるためには、サーベイの参加率を高めることが必要です。
そのためには、サーベイの重要性を社員に伝え、結果が具体的な改善につながる可能性を理解してもらうことが重要です。 - 匿名性の保持
社員が率直に意見を述べるためには、匿名性の保証が重要となります。
匿名性が保たれていないと感じた社員は、真実を話すことをためらうかもしれません。
そのため、サーベイの匿名性を保つことを明確に伝え、信頼性を確保することが重要です。 - 結果の活用
サーベイの結果をただ収集するだけでなく、それを具体的な改善策に反映させることが望ましいと言えます。
結果を活用して具体的なアクションを起こすことで、社員のエンゲージメント向上に寄与すると考えられます。
まとめ
本記事では、エンゲージメントサーベイについて深く掘り下げ、その目的、主要な要素、実施手順、質問項目の設定、結果分析、結果のフィードバックと改善策の反映方法、そしてその重要性について詳しく解説しました。
エンゲージメントサーベイは、社員の仕事への情熱やコミットメント、組織への献身性を測るツールです。
エンゲージメントの高い組織は、高い生産性、低い離職率、高い顧客満足度など、さまざまなポジティブな結果を達成することができます。
エンゲージメントサーベイを設計・実施する際には、包括性、具体性、公平性を確保することが重要であり、質問はシンプルで明瞭な言葉を使い、具体的な状況を想定し、ポジティブな表現を用い、5段階評価などの数値で答えられる形式が奨励されています。
サーベイの結果を適切に分析し、それを社員にフィードバックし、そして組織の改善策に反映させることで、サーベイはその真の価値を発揮します。
サーベイを一度実施しただけで満足せず、定期的に繰り返すことが重要であり、これによりエンゲージメントの動向を把握し、時々の状況に応じて組織を改善するための洞察を得ることができます。
エンゲージメントサーベイは、エンゲージメントの高い組織をつくるための有力なツールであり、それを有効に活用することで、組織はその成果を最大化することが可能です。