各業界のトップ企業から学ぶ「人事戦略」の成功の秘訣

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人事戦略は企業の成長と密接に関連しています。適切な人材を確保し、その才能を最大限に引き出すことは、競争優位性を保つ上で欠かすことのできない要素です。そのため、この記事では各業界のトップ企業がどのような戦略を展開し、どのように成功を収めているのかを詳解説していきます。

人事戦略の定義と目的

人事戦略とは、企業のビジネス戦略を実現するための人的資源管理に関する戦略を意味します。この戦略には人材の採用、育成、評価、報酬、そして組織風土の形成といった要素が含まれます。人事戦略では、企業ビジョンや目標達成に向け、どのように人材マネジメントするかを決定ししていきます。

人事戦略がビジネスに及ぼす影響

労働生産性の向上

適切な人事戦略は労働生産性の向上に寄与します。労働生産性とは、労働時間あたりの生産高を意味し、これが高いほど企業の収益性が高まります。実際に、学習プログラムをはじめ組織開発に充てる投資は生産性の向上に直結します。人事コンサルティング会社であるGallupの調査によると、従業員のエンゲージメントが高い企業では、生産性が17%も高い 結果が出ています。これはエンゲージメントが高い従業員が、より高いパフォーマンスを発揮し、それが全体の生産性に貢献するためです。

従業員満足度とリテンションの改善

適切な人事戦略は、従業員満足度とリテンションの改善にも寄与します。例えば、公正で透明な評価・報酬システムや、教育・育成プログラムの提供は、従業員の満足度を高め、離職率を低下させます。高い従業員エンゲージメントを持つ企業では、従業員の離職率が41%低い というデータが明らかになっています。これは、満足度が高い従業員が長期にわたって企業に留まることで高品質なナレッジが蓄積され、研修にかかるコストを抑制したり、結果的に新規採用コストの軽減にもつながります。

企業の収益性と成長

人事戦略は企業の収益性と成長性にも直接影響を及ぼします。生産性の向上、従業員満足度の向上、そしてそれによるリテンションの改善はすべて、企業の収益性と成長を推進します。エンゲージメントが高い企業では、株主へのリターンがもたらす利益が、こちらも調査結果ではエンゲージメントが低い企業と比較して10%高い と示しています。これは、エンゲージメントの高い従業員が高いパフォーマンスを発揮し、それが結果的に企業の収益性と成長に貢献するためです。

以上のように、適切な人事戦略による労働生産性、従業員満足度、リテンションの改善は、企業の収益性と成長にも寄与します。これらはすべて相互に影響し、どれかが改善すると他の指標も改善するという相乗効果が生まれます。

※参考文献:State of the Global Workplace

人事戦略の構築要素

採用

採用は人事戦略の第一歩です。企業は優秀な人材を見つけ、魅力的なオファーを提示し、採用する必要があります。その際、企業のビジョンや組織文化に適合する人材を見つけることが重要です。

教育・育成

教育・育成もとても重要です。従業員がスキルを磨き、知識を深め、キャリアを発展させるためには、継続的な教育と育成が必要となります。企業は、各従業員が自身の役割を十分に果たせるような育成プログラムを提供することが求められます。

評価・報酬

評価・報酬システムは、従業員のパフォーマンスを適切に評価し、それに基づいて報酬を設定する手段です。これにより、従業員のモチベーションを維持し、成果を最大化します。また、公正で透明性のある評価・報酬システムは、従業員の満足度とロイヤルティを向上させます。

組織風土

開放的で協調性のある組織風土は、従業員が自分の意見やアイデアを自由に表現し、チームとして効果的に機能するための基盤を提供します。企業は、従業員が互いに信頼し、組織全体の目標に向かって協力し合えるような風土を作り出すことがとても重要です。

各業界トップ企業の人事戦略事例 

世界のトップ企業による独自の人事戦略の成功事例をいくつかご紹介します。

Googleの人事戦略(IT業界)

Googleは、独自の人事戦略として「データ駆動型のアプローチ」を採用しています。彼らは、従業員の採用から育成、評価、報酬まで、全てのプロセスにおいてデータを基に判断を行います。
具体的には、Googleでは事業部単位で人事担当を配置します。また、有名な戦略ですが、「People Analytics」という従業員データを分析する専門チームが存在し、彼らが従業員のモチベーション、パフォーマンス、生産性など数値化された情報を分析し、その結果を基に人事戦略を策定しています。このアプローチにより、Googleは適切な人材を育成し、リテンション率も大きく改善させることに成功し、企業全体のパフォーマンスを高めています。また、Googleは、その企業文化として「心地よい職場環境の提供」も重視しています。充実した福利厚生やオフィス環境は、従業員のモチベーションを高め、生産性を向上させています。

TOYOTAの人事戦略(自動車業界)

TOYOTAは、その成長を支える人事戦略として「長期的な人材育成」を重視しています。「人は育つ」という哲学のもと、長期的視野で人材を育成し、持続的な成長を追求しています。
具体的には、「改善・挑戦」の精神を企業文化として持ち、職務体験やローテーション制度を通じて、多角的な視野を持つリーダーを育成しています。すべての従業員が問題解決のための改善活動に取り組み、その結果として、生産性や品質が向上するという「TOYOTA生産方式」は、全世界に知られるほどになりました。

セブンイレブンの人事戦略(リテール業界)

セブンイレブンは、「多様な働き方の支援」が企業側の最重要責務と捉え、「働きやすい職場づくり」「ダイバーシティ&インクルージョン」「公正な評価と能力向上支援」「コンプライアンス」の4つを軸に置いた人事戦略を展開しています。
また、独自の戦略としては、過去のやり方に固執せず、業務や組織を自ら改革していく意欲ある従業員の育成のため、勤続3年以上の従業員が他の職種へチャレンジすることができる「立候補制度」が用意しています。新たな業務にチャレンジするサイクルを提供することで滞留を避け、活力ある組織づくりにつながっています。

組織における人事戦略の役割

組織のビジョンと人事戦略のリンク

セブンイレブンの人事戦略の例では「従業員」と「フランチャイジー」の両輪によって支えられています。両者の満足度を向上させることによって、業績を向上させるという戦略をとっています。
具体的には、店舗従業員に対しては、教育と研修の機会を提供し、スキルアップを促しています。また、昇進のチャンスを提供し、キャリアパスを示すことで、モチベーションを維持しています。フランチャイジーに対しては、ビジネスの成功を支援するための情報提供や教育、アドバイスを提供しています。さらに、フランチャイジーの利利益を確保するための価格設定や商品開発についてもサポートしています。このように、従業員とフランチャイジーの両者を重視することで、セブンイレブンは国内外での成功を築いています。

リーダーシップの重要性

リーダーの役割は、人事戦略を策定し、それを実行に移すことです。リーダーは、成功を確実にするために、明確なビジョンを共有し、従業員を鼓舞し、継続的なサポートを提供する必要があります。

成功する人事戦略の策定・実施のステップ

1. ビジョンと目標を明確にする

まずは企業全体のビジョンと目標を明確にすることが重要です。これは組織の核となる思考を形成し、全ての戦略的決定の指針となります。
具体的には、ビジョンを見失いがちな短期的な目標も含め、どのようにビジョンと紐付いているのか理解してもらう必要があります。そのため人事戦略がどのようにこれらのビジョンと目標に貢献できるのかを考えます。

2. 現状の人材と組織風土を評価する

続いて組織内の現状を評価します。人事戦略は組織の人材と風土に密接に関わるため、これらを正確に理解することが重要です。
具体的には、現在の従業員のスキルレベル、組織内の役割分担、組織文化や風土、人材の離職率や満足度などを評価します。これにより人事戦略が対応すべき課題や強化すべきポイントを明確にすることができます。

3. 必要な人材とスキルを特定する

現状評価をもとに、ビジョンと目標を達成するために必要な人材とスキルを特定します。これは企業が将来的にどのような人材を確保し、育成するべきかを示すため、人事戦略の核心となるステップです。
具体的には、短期的、中・長期的に組織の成長や変革に必要な役割を特定し、それぞれの役割に必要なスキルや経験を定義します。これらの人材をどのように採用し、育成するかの方針を立てます。

4. 採用、育成、評価、報酬を策定する

必要な人材とスキルが明確になったら、続いて、どのように人材を確保し、育成、評価、そして報酬するための具体的な戦略を策定します。これらの戦略は、人材のライフサイクル全体をカバーする内容になります。
具体的には、求める人材像に基づいた採用戦略、人材の成長を支援する育成プログラム、パフォーマンスに対する評価体系、そして、それらに基づいた報酬体系を策定します。

5. 結果を評価し、必要に応じ修正する
最後に、策定した戦略を実行し、その結果を評価し、必要に応じて修正します。これにより、人事戦略は継続的に進化し、組織の変化やビジネス環境の変化に対応することができます。
具体的には、策定した施策を順次実施し、その結果を定量的・定性的に評価します。そして、評価結果をもとに、施策の改善や新たな施策の策定を行います。このプロセスを繰り返すことで、人事戦略は持続的に改善され、企業の成長と発展を支えることができます。

まとめ

広く提唱されている施策を中心に書き綴りましたが、各業界のトップ企業の成功事例からは人事戦略の重要性と、それが企業の成功にどのように寄与するかを少し学ぶことができるかと思います。
また、報酬体系の再策定にはかなりの労力を要するため、多くの企業が何色を示します。しかし、新しい働き方としてさまざまな改革が進む中、報酬体系だけは大昔に定めた内容から改変されず、それにより生じる損失コストを把握されていない企業が多いのも事実です。まずは今求める人材や役割など人事戦略の構成要素と照らし合わせ、ミスマッチが生じている箇所を精査してみてください。
人事戦略は組織の成功に不可欠な要素であり、これを適切に管理することで企業の競争力を維持し、発展を遂げることができます。組織の特性やニーズに合わせた戦略を策定し、その実施を通じて人材のパフォーマンスを最大限に引き出すことが人事戦略の鍵となります。トップ企業の成功事例を参考に、自社のビジョンと目標に合った人事戦略が策定できているのか、今一度見直すきっかけになれば幸いです。

プロダクト事業部長 柴田将之

筆者:マーケティング統括 柴田将之

2005年 GMOグローバルサインホールディングス入社。クラウド黎明期より情報セキュリティの啓発に尽力。2013年 スカイアーク入社。100を超えるWeb開発のPMを経て、2018年 社内報アプリ「SOLANOWA」を設計。事業責任者として企画・開発・運営を統括し、80万ユーザーが利用するシェアNo.1のプロダクトへ成長させる。2024年 人本経営学(EMBA)の修得と並行し、その啓蒙と事業多角化に向けたメディア「BlueNote™」を開設。現在に至る。

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