社内報を筆頭にした広報媒体は、社内外への情報発信の重要なツールです。
しかし、誤字脱字や事実誤認などのミスを見落としてしまうと、担当者個人の責任だけでなく、会社全体の信頼を損なうリスクがあります。
そんな事態を防ぐために欠かせないのが、校正と校閲です。
一見似ている言葉ですが、実はそれぞれ異なる役割があります。
そこで今回は、紙の社内報やWeb社内報の運営には欠かせない校正と校閲について、その役割の違いや、実際に校正と校閲を行う際に気をつけるべきポイントなどをまとめました。
目次
●「校正」と「校閲」の違いとは?
・校正
・校閲
●校正と校閲の共通ポイント
・第三者のWチェックで客観的な視点を取り入れる
・文字量が多い場合は出力してみる
・時間を置いて新鮮な目でチェックする
●なぜ校正や校閲が必要なのか
・信頼性の担保:企業のブランドを守る
・情報の精度向上:より良い成果を生み出す
・最後の門番:情報の安全を守る
●校正、校閲が不十分で起きるトラブル例
●具体的なチェック方法
・校正の主なポイント
・校閲の主なポイント
●社内報やWeb社内報で特に校正・校閲が必要なコンテンツ例
●まとめ
「校正」と「校閲」の違いとは?
原稿の誤りを確認するプロセスは、専門用語として「校正」や「校閲」と呼ばれています。
共にコンテンツの誤りを見つけ出し、修正する作業ですが、対象となる要素が異なります。
具体的には、「校正」と「校閲」はどのように異なるのかをまとめました。
校正
校正は、文字や記号、文法などの誤りを修正する作業です。
具体的には、以下のような点をチェックします。
・誤字脱字
・文法上の誤り(句読点、送り仮名など)
・表記の統一(漢字、ひらがな、カタカナなど)
・色彩の違い
単に読み比べるだけでなく、一文字ずつ点検する意識が重要です。
日本語の表記ルールを理解することで、誤りを発見しやすくなります。
また、見落としを防ぐポイントとして、「右から左へ逆順で読む」方法があり、普段とは逆方向に読むことで、脳内変換を防ぎ、表記の誤りに気づきやすくなります。
校閲
校閲は、内容の誤り、論理的な矛盾、表現の不適切さなどを修正する作業です。
具体的には、以下のような点をチェックします。
・事実誤認
・論理的な矛盾
・表現の不適切さ(差別表現、誤解を招く表現など)
・情報の不足
文の構造や論理、表現の明瞭さなど、文章全体の質を向上させることが目的です。
文章全体を読み込み、論理的な整合性や情報の信頼性を確保します。
また、校閲ではスタイルや語彙の統一も重要視されます。
例えば、「明日会議がありますので、お願いいたします。」と書かれているところを、「明日会議があります。ご参加お願いします。」に修正するのが校閲の一例です。
校正と校閲の共通ポイント
校正と校閲は、高品質なコンテンツ制作に欠かせない2つのプロセスです。
出版社や制作会社では、それぞれの専門知識を持つ担当者を分けることで、より精度の高い作業を実現しています。
しかし、両者には密接な関係があり、以下の共通点を押さえることで、より効果的な校正・校閲が可能になります。
・第三者のWチェックで客観的な視点を取り入れる
作成者自身では気づきにくい誤りを見つけるために、第三者によるWチェックが有効です。
客観的な視点を取り入れることで、より高品質なコンテンツに仕上げることができます。
・文字量が多い場合は出力してみる
画面上のデータよりも、紙に出力することで誤りに気づきやすくなります。
特に文章量が多い場合や細かい文字が並んでいるときは、出力してチェックしてみましょう。
・時間を置いて新鮮な目でチェックする
執筆後、少し時間を置いてから校正・校閲を行うことで、客観的な視点でチェックすることができます。
新鮮な目で文章を捉えることで、見落としを防ぐ効果があります。
なぜ校正や校閲が必要なのか
誤字脱字や事実誤認は、読み手に負担をかけ、文章の信頼性を損ないます。
校正と校閲は、これらの誤りをなくし、読みやすく、信頼できる文章にするための重要な役割を果たします。
具体的には、以下の3つのメリットがあります。
・信頼性の担保:企業のブランドを守る
誤った情報発信は、企業の信頼性を損ない、損害賠償責任に繋がる可能性もあります。
校正・校閲は、企業のブランドを守るために不可欠なリスク管理と言えるでしょう。
・情報の精度向上:より良い成果を生み出す
校正・校閲は、単に誤りを修正するだけでなく、文章の表現や論理的な整合性を改善し、より質の高い情報を発信することを可能にします。
・最後の門番:情報の安全を守る
校正・校閲は、誤った情報が世に出るのを防ぐ最後の砦として、重要な役割を果たします。
企業にとって、公に発信する文章の質は、その責任や信用に関わる重要な問題です。
校正と校閲は、企業の信頼を守るためにも不可欠な作業と言えるでしょう。
校正、校閲が不十分で起きるトラブル例
誤字脱字や不適切な表現を含むコンテンツは、企業にとって様々なリスクを招きます。
コスト面では、印刷物であれば再印刷による費用発生、インターネット上のコンテンツでも修正作業や拡散による損害賠償リスクなどが考えられます。
信頼面では、誤情報や不適切な表現は企業のイメージを損ない、顧客離れや株価下落などの影響を与える可能性があります。
特に近年は、インターネット上の情報の拡散速度が速いため、一度公開された誤情報は修正が難しく、企業の評判に長期的な悪影響を与える可能性があります。
以下、校正・校閲不足による具体的なトラブル事例を紹介します。
・広告代理店
クライアントの新商品広告において、商品特徴の表現が不正確であることが指摘され、消費者からのクレームが殺到。
広告の撤回と補償が必要になり、クライアントとの信頼関係が損なわれる。
・出版社
小説の校閲を急いで行った結果、重要なプロットの矛盾が見過ごされ、読者から厳しい批判を受ける。
再版や修正版の発行が不可避となり、出版社の評判が傷つく。
・ウェブ開発会社
オンラインストアの商品説明文に不正確な情報が含まれ、顧客が商品を誤解して購入。
商品の返品と交換が発生し、会社の効率性と信頼性が損なわれる。
・大手スーパー
セールチラシで特売価格の数字を一桁間違って配布。
誤りに気づかず、赤字が発生。
・ITベンチャー企業
医療関連のキュレーションサイトで法令違反の表現が見つかり、運営元企業の執行役員が辞任。
・ネットメディア
校正・校閲部門を持たないため、誤字脱字が多く、信頼度が低下する。
・政府機関
政府の公式文書に誤った法律の解釈が記載され、法的混乱を引き起こす。
訂正が必要となり、信頼性が揺らぐ。
具体的なチェック方法
校正・校閲は、単に文章を読むだけでなく、様々な観点からチェックを行い、読みやすく、正確で、信頼できる文章に仕上げるための重要なプロセスです。
では、実際はどんなことを行うのでしょうか。
校正、校閲の具体的なチェック方法は、次のような点が挙げられます。
校正の主なポイント
- 誤字脱字の確認
同音異義語や送り仮名、固有名詞などの誤りを検出します。 - 文章の一貫性の確認
文章全体の論理的なつながりや一貫性を確保します。 - 敬体の確認
「ですます調」や「だ・である調」の一貫性を確認し、スタイルを統一します。 - 表記統一
数字単位や英字の表記などの統一を確認します。 - 固有名詞の確認
人名や地名などの固有名詞が正確かどうかを確認します。
校閲の主なポイント
- 事実確認
記述が事実と一致しているかどうかを確認します。 - 数値やデータの精度
数値やデータに誤りがないかを確認し、正確性を保証します。 - 表記ゆれの確認
表記ゆれや統一性の確認を行い、一貫性を維持します。 - 文法的・構文的な正確性
不自然な日本語や文法、接続詞、修飾語の使い方を修正し、文章の流れをスムーズにします。 - 著作権や引用の確認
著作権や引用に関する法的な注意が必要な場合、それを確認し違反がないかを保証します。
社内報やWeb社内報で特に校正・校閲が必要なコンテンツ例
社内報やWeb社内報は、社員への情報共有やコミュニケーションツールとして重要な役割を果たします。
しかし、誤字脱字や事実誤認などがあると、情報の信頼性を損ない、企業イメージにも悪影響を及ぼしかねません。
社内報やWeb社内報のコンテンツ例で、特に校正や校閲が重要となるケースをいくつか挙げてみましょう。
- 社長メッセージ・役員インタビュー
代表取締役社長や役員の言葉は、社員にとって重要な情報です。
誤字脱字や事実誤認があると、企業の信頼性を損ないかねません。
役員インタビューでは、発言内容だけでなく、表現方法や言葉遣いにも注意が必要です。 - ニュース・お知らせ
新規事業や人事異動など、会社全体に関わる重要な情報を掲載します。
誤字脱字があると、情報の信頼性を損ない、混乱を招く可能性があります。
数字や日付など、正確性が求められる情報も誤りがないか確認が必要です。 - 社員インタビュー・コラム
社員の個性や考え方が伝わるコンテンツです。
誤字脱字や事実誤認があると、社員の信頼を失い、コミュニケーションの阻害に繋がる可能性があります。
固有名詞や専門用語など、誤りやすい表記に注意が必要です。 - 業績報告・財務情報
会社の業績や財務状況を伝える重要なコンテンツです。
誤字脱字や事実誤認があると、投資家や取引先からの信頼を失い、企業価値の低下に繋がる可能性があります。
数字やグラフなど、正確性が求められる情報も誤りがないか確認が必要です。 - 法令・規則関連情報
法令や規則に関する情報は、社員の行動規範となるものです。
誤字脱字や事実誤認があると、コンプライアンス違反に繋がる可能性があります。
専門用語や解釈が難しい部分については、専門家に確認する必要があります。 - 動画・音声コンテンツ
動画や音声コンテンツは、誤字脱字などの文字表記の誤りはもちろん、内容や音声の聞き取りやすさにも注意が必要です。
字幕やナレーションの内容と音声の内容が一致しているか確認する必要があります。 - インタラクティブコンテンツ
アンケートやクイズなど、社員が参加するインタラクティブコンテンツは、誤字脱字や事実誤認があると、社員の参加意欲を低下させる可能性があります。
設問や選択肢の内容がわかりやすく、誤解を招かない表現になっているか確認する必要があります。
まとめ
校正と校閲は、高品質なコンテンツ制作、そして企業の信頼性を守るために不可欠なプロセスです。
それぞれ役割は異なりますが、第三者による客観的な視点、出力による視覚的な確認、時間をおいた新鮮な目でのチェックといった共通ポイントを押さえることで、より効果的な作業が可能になります。
校正・校閲は、単なる誤字脱字の修正ではなく、情報の信頼性を担保し、より良い成果を生み出すための重要な役割を果たします。
企業にとって、社内報やWeb社内報は重要な情報発信ツールです。
誤字脱字や事実誤認などのミスは、企業イメージを損なうだけでなく、法令違反や損害賠償責任に繋がる可能性もあります。
校正・校閲は、こうしたリスクを回避し、企業の信頼を守るための最後の門番としての役割を果たします。
校正と校閲をしっかりと行うことで、企業は高品質なコンテンツを発信し、信頼性を高め、より良い成果を生み出すことができます。
今回ご紹介したポイントなどを参考にトラブルを未然に防ぎ、読者に信頼性の高いコンテンツを提供していきましょう。