「社内報は、マーケティングである。」
いまこのタイトルを見て、納得した方も、腑に落ちない方もいると思います。
「マーケティング」と聞くと、ビジネスにおける市場調査のような意味を思い浮かべますよね。
マーケティングとは、顧客が自社の製品やサービスを購入してくれるように企業が顧客に向けて行う活動のこと。
社内報は市場や顧客ではなく自社に向けて発信するツールですが、マーケティングとどんな関係があるのでしょうか?
これから、読み終えた後に「社内報は、マーケティングですね」と感じてもらえる話をしていきたいと思います。
マーケティングにしてマーケティングにあらず?インターナルマーケティングとは
マーケティングはマーケティングでも、社内報と関係が深いのは「インターナルマーケティング」と呼ばれるものです。
さっそく新たな用語の登場となり失礼いたしました。
インターナルマーケティングの「インターナル(internal)」は「内部」を意味する言葉です。
この内部とは「企業の内部」という意味を持ち、インターナルマーケティングとは企業の内部におけるマーケティング活動を指す用語です。
製品やサービスの購入を促すためのマーケティングとは異なり、自社で働く従業員に対して満足度を調査することを示しています。
従業員の満足度とは、給与や福利厚生、仕事に対するモチベーションなどを統括して測ることができると言われています。
そしてこの従業員の満足度と企業の関係を「エンプロイーエンゲージメント」と呼びます。
エンプロイーエンゲージメンが高ければ高いほど、従業員と企業がお互いに信頼や愛着を持てる理想的な関係であると考えられています。
エンプロイーエンゲージメントが高まると、実にさまざまなシナジーを生み出します。
仕事に対するモチベーションが向上し、自社の製品やサービスを含む顧客対応の質が増加。
他にも、企業に対するロイヤルティ(忠誠度)が向上し、離職率の低下に結びつく組織づくりが可能になります。
結果として、企業活動において大きな利益をもたらすと考えられています。
エンプロイーエンゲージメントを高めるためには、従業員の満足度を向上させることが欠かせません。そのために、企業による従業員に対する「インターナルマーケティング」が重要になるのです。
インターナルマーケティングが企業に必要な理由
インターナルマーケティングを行う目的とメリットは、従業員満足度の向上によって、結果的に顧客満足度や業務効率の向上に繋がることです。
そしてインターナルマーケティングを理解する手助けとなるのが「サービスプロフィットチェーン(SPC)」です。
サービスプロフィットチェーン(SPC)とは人事用語と呼ばれる言葉の1つで、従業員満足度・顧客満足度・業績の3要素の因果関係を表しています。これはマネジメント研究の第一人者であるハーバード・ビジネススクールのへスケット(J.S.Heskett)、サッサー(W.E.Sasser,Jr.)らが1994年に提唱したフレームワークです。
このフレームワークを簡単に説明すると、従業員満足度・顧客満足度・業績の3要素にはそれぞれ因果関係があり、どれか1つでも欠けるとすべての要素が悪化し、どれか1つでも向上するとすべての要素が向上するというもの。
書き出してみるととてもわかりやすくなると思います。
インターナルマーケティングの施策により従業員満足度が上がる
↓
従業員満足度が上がると企業に対する従業員ロイヤルティも上がる
↓
従業員ロイヤルティが上がると製品やサービスの質も上がる
↓
製品やサービスの質が上がると顧客の満足度やロイヤルティも上がる
↓
顧客の満足度やロイヤルティが上がると企業のファンが増える
↓
企業のファンが増えると売り上げが増え業績が上がる
「上がる・増える」を「下がる・減る」に変えると途端に真逆のフローをたどることが明白になります。
このような因果関係が成り立つことから、インターナルマーケティングによって従業員満足度を向上させることが企業にとって重要であると言われているのです。
そこで、社内報の出番です
ここまでの流れで、もうお気づきかと思います。
従業員満足度を上げエンプロイーエンゲージメントを高めるためには、インターナルマーケティングを行うことが重要であり、有効です。
従業員に対して、企業の理念や福利厚生をはじめ制度や環境改善に向けた活動を広く伝えることができるツールが「社内報」です。
そして、従業員の満足度が高まるプロセスの中では、お互いを理解しあうためのコミュニケーションが欠かせません。
社内報はその誌面の中でさまざまなコンテンツを企画し従業員に公開することで、このコミュニケーションの活性化を担う役目も持っています。
すなわち、社内報を有効に活用していくことが「インターナルマーケティング」の1つであると言えるのです。
社内に向けたマーケティングではありますが、ここでも"社内報に対する"ニーズを把握することを疎かにしてはいけません。
従業員が知りたいと思っていることは何なのか?
読みたいと思うコンテンツはどんなものか?
企業の活動を知ってもらうためにポジティブな情報をベストなタイミングで共有(公開)できているか、顧客に対して行うマーケティングと同様に、調査・把握・検証するプロセスを忘れないようにしましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
「社内報は、マーケティングである」と言っても決して過言ではないと思いませんか?
企業活動には、売上や業績を上げることと同じくらい、従業員の満足度を向上することも重要です。
そのために社内報というツールが、企業と従業員の理念を共有する架け橋になります。
社内報を発信することが従業員の満足度を向上させるインターナルマーケティングの1つであることを認識しておくと、やりがいや使命感を改めて感じることができるのではないでしょうか。