社内報担当者が知っておきたい著作権や権利の基本

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社内報は、企業の理念や事業内容、従業員の活躍などを社内外に伝える重要なツールです。
多くの情報を扱うメディアでもある社内報の制作や掲載には、著作権や肖像権などの法律や権利が関係します。
これらの法律や権利を理解しておかないと、著作権侵害や肖像権侵害などの思わぬトラブルにつながる可能性があります。

そこで今回は、社内報担当者が知っておきたい法律や権利についてまとめました。

社内報制作に関連する権利

社内報をはじめとする制作物に関連する法律には、著作権のほか、肖像権や商標権などがあります。
社内報制作でこれだけは知っておきたい法律や権利を、下記に5つピックアップしました。

・著作権

著作権とは、著作者が創作した著作物に対して、複製、翻訳、上演、公衆送信などの利用を独占できる権利です。
著作物には、小説、音楽、美術、映画、写真、ソフトウェアなど、多種多様なものがあります。
著作権は、著作物を創作した時点で自動的に発生し、登録や手続きは不要です。
著作権の保護期間は、著作物の種類によって異なりますが、原則として著作者の死後70年間です。
著作権侵害とは、著作権者の許可を得ずに著作物を無断で利用することで、著作権侵害は民事上の損害賠償請求や刑事罰の対象となります。

・肖像権

肖像権とは、自分の顔や姿態をみだりに撮影・公表されない権利です。
他人が個人の肖像を無断で使用し、個人の名声やプライバシーに損害を与えることを防ぎます
法律で明文化されていませんが、判例により確立された権利です。
通常、肖像権は著作権と異なり、法的な権利行使のために登録する必要はありません。
肖像権は個人に帰属し、死後も続くことが多いため、遺族によって継承されることもあります。
肖像権の侵害とは、無断で他人の写真を撮影したり、撮影した写真を勝手に公表したりする行為です。
肖像権の侵害は、民事上の損害賠償請求や刑事罰の対象となります。

・商標権

商標権とは、商品やサービスの出所を示すために使用される商標を独占的に使用することができる権利です。
商標は、文字、図形、記号、立体的形状、音、色彩など、多様な形で表されることができます。

商標権を取得することで、第三者による商標の不正使用を防止し、企業の利益を保護することができ、商品やサービスの差別化やブランドイメージの確立に役立ちます。
商標権は、特許庁に商標登録出願をして、登録査定となった後に、登録料を納付することで取得することができ、商標権の効力は日本全国に及びます。
商標権者は、第三者に対してその商標の使用を禁止することができ、商標権の侵害は、民事上の損害賠償請求や刑事罰の対象となります。

・パブリシティ権

パブリシティ権とは、有名人や著名人が、その氏名や肖像などが、商品の販売等を促進する顧客吸引力を有する場合、対価を得て第三者に排他的に使用することができる権利です。
有名人や著名人は、その氏名や肖像が商品や広告などを通じて使用されることで、商品の販売促進やブランドイメージの向上に貢献します。
そのため、その氏名や肖像の使用について、本人の許可を得て対価を支払うことが、公正かつ合理的であると考えられているのです。
パブリシティ権は、日本では法律で明確に規定されておらず、判例によって確立された権利です。
パブリシティ権の侵害とは、有名人や著名人の氏名や肖像などを、本人の許可を得ずに商品や広告などに使用することで、パブリシティ権の侵害は、民事上の損害賠償請求や刑事罰の対象となります。

・二次使用

二次使用とは、すでに存在する著作物を、翻訳、編曲、変形、脚色、映画化など、新たな形態で利用することをいいます。
二次使用により生まれた著作物は、二次的著作物と呼ばれます。
二次使用は、著作権法で認められた権利で、著作物の新たな価値を創造し、文化の発展に貢献する重要な役割を果たしています。
ただし、二次使用を行う際には、原著作物の著作権者の許諾を得る必要があります。
許諾を得ずに二次使用を行うと、著作権侵害に該当する可能性があります。
著作権法や地域によって規制が異なるため、二次使用を検討する際には法的アドバイスを受けると良いでしょう。

著作権と肖像権や商標権、パブリシティ権の違い

社内報制作では、著作権、肖像権、商標権、パブリシティ権の侵害に注意が必要です。
ここで特に気を付けたいのが、著作権は線引きが難しいという点です。

肖像権やパブリシティ権は、著作権に比べて判断がしやすいのが特徴です。
例えば、社内報に掲載する写真に、本人の許可を得ていない人物が写っている場合は、肖像権を侵害する可能性があります。
また、有名人の写真を掲載する場合は、パブリシティ権を侵害する可能性がありますが、こうした点に注意して対処しておくことで、問題は発生しないと考えられます。

商標権については、登録されている他社の商標をほぼそのままの表現や印象で用いることをしなければ、問題は発生しません。

著作権は、基本的にほぼ全ての創作物に発生すると考えておきましょう。
例えば、貰った原稿に許可なく手を加えて掲載したり、社員が撮影した写真を無断で掲載することも著作権の侵害にあたります。
社内報に掲載する写真や文章については、著作権者の許諾を得ておくのが安全です。

誰に権利があるか?理解することが大切です

社内報を制作するにあたって、ライターに記事を書いてもらったり、カメラマンに写真を撮ってもらったり、さまざまな素材を受け取り編集して制作を進めます。
こうした素材には、ほぼすべてに著作権が発生します。
この場合、契約で著作権の所有先を定めていない限りは、著作権は、これらの素材を創作し、表現したクリエイターにあります。

例えば、社内報に写真を掲載する場合で考えてみましょう。
カメラマンは「写真」という著作物を提供し、社内報の発行元である企業はカメラマンへ対価を支払います。
しかし、対価を支払ってもカメラマンの著作権まで企業に移転するわけではありません。
写真をどの媒体でどう扱うか(位置や大きさ、トリミング方法など)を決める権利は、著作権者であるカメラマンにあります。
そのため、撮影依頼時に、使用目的や使用媒体などをカメラマンに伝えておく必要があります。

また、写真に写っている人には、自分の肖像に関する扱いを決める権利、いわゆる肖像権があります。
今回の場合「社内報には掲載しても外部のWebサイトへの二次使用はNG」など、自分の肖像に関する扱いを決める権利があります。
このような著作権や肖像権に関する知識を、社内報担当者は理解しておくことが大切です。

これってOK?社内報でよくある権利のギモン

ここからは、社内報の制作現場で起こり得る権利の疑問について、それぞれ権利の侵害にあたるのか否かをピックアップしていきます。

・雑誌の表紙画像をコピーして社内報で使用する

→NG
絵や写真には著作権があります。
著作権者(カメラマンやイラストレーターなど)や出版社の許諾を得ることが原則です。

・サイトの文章を記事の中で「引用」する

→OK
文章には著作権がありますが、「引用」は次の条件を満たした場合、例外的に認められます。
(1)記事と引用される文章が「主」と「従」の関係にあり明確に区別され、(2)報道目的など引用の必然性がある、(3)引用の文章を変更せず、(4)引用元を明示する。

・映画のDVDや音楽のジャケットの写真の掲載する

→NG
写真には著作権があるため、無断で使用するのはNGです。ネットから写真を勝手に抜き出すという行為が権利侵害にあたってしまうので注意しましょう。

・自社が掲載された新聞の記事を社内報で紹介する

→NG
新聞記事にも著作権があるため、原則として新聞社の承諾が必要です(引用の場合を除く)。

・新聞や雑誌の記事を切り抜いて掲載する

→NG
新聞や雑誌の記事をクリッピングして、それを回覧することは可能とされていますが、記事をスキャンして、社内報に掲載する場合は著作物の複写にあたるため、発行元である新聞社や出版社の許諾を得る必要があります。
また、イントラネットや社内のサイネージ、メールなどに掲載する場合も同様です。

・有名キャラクターのコスプレをした写真を掲載する

→NG
少し複雑ですが、結論としてはNGです。
コスプレは、その元になるキャラクターの制作者への著作権侵害とならないかという点に注意が必要で、厳密にはコスプレ写真を著作権侵害とは言えないようですが、制作者からクレームを受ける事例も多々あります。
個人で楽しんだり、ハロウィンで仲間とコスプレを楽しんだりすることは、キャラクターの著作権を有する人の利益を害するものでなければ可能だとされています。
しかし、それをSNSなどで公開すると、制作者からクレームがくるリスクが生じるため、社内報も同様に権利侵害につながる可能性が否定できないため、掲載には配慮が必要です。

・社内報用に撮った写真を会社HPでも使用する

→NG
当初の目的以外の使用は、新たな許諾が必要です。
写真はカメラマンに著作権があるため、最初に許諾した範囲を超えて使う場合、この場合はHPでの二次使用にあたるので許諾が必要となります。
また、被写体の人物については個人に肖像権あるので、撮影時の許諾範囲を超える場合には、同様に新たな承諾を取ってください。
なお、従業員が仕事上撮影した写真は「職務著作」にあたるため許諾が不要です。
職務著作とは、 会社の命令に基づき、従業者が職務上作成する著作物のことです。 
職務著作の場合、実際に著作物を創作したのは自然人である従業者ですが、一定の要件を満たす場合には、その会社が著作者となります(著作権法15条)

・自社のイベントに出た有名人を社内報に掲載する

→NG
有名人の肖像にはパブリシティ権があるため、本人もしくは所属事務所の許諾が必要です。
社内報とはいえ、本人や所属事務所に無断での掲載はパブリシティ権の侵害にあたり、プライバシー的な意味合いでは肖像権の侵害にも抵触するので注意しましょう。

・人気マンガのキャラをデザインに使用する

→NG
マンガの絵やストーリーには著作権があり、キャラクターにはパブリシティ権があるため、権利の侵害となる可能性が高いので避ける方が妥当です。

・建築物を撮影した写真を掲載する

→OK
美術の著作物に当たらない建築物については、撮影した画像を利用することは、著作権法上、原則自由にできます。
従業員から写真を提供してもらう場合は、本人の使用許諾を得た写真であれば掲載しても特に問題にはなりません。
ただし、太陽の塔や、ルーブル美術館といった著作権を所有する建築物も存在するため、厳密には調べる必要が出てきます。

有名アーティストと一緒に撮影した写真を掲載する

→NG
アーティストや芸能人など、有名人と撮影した写真は、無断で使用すると肖像権やパブリシティ権を侵害にあたります。
個人的な利用の範囲であれば許容されますが、社内報のような、一定数以上の人が目にすることを前提とするものへの写真の掲載は個人利用の範囲を超えるので注意が必要です。

・三ツ星レストランの料理写真を掲載する

→OK
撮影者の著作権と、被写体の権利が絡むため、少し複雑ですが、結論としてはOKです。
「レストランの料理写真」と言っても、投稿者本人が撮影したものであれば、撮影者の著作権は問題ありません。
ただし、インターネットから拾った写真を流用するのはNGです。
被写体の権利としては、基本的には作られた料理に著作権は生じないものとされていますが、独自で高い創作性がある場合には著作権が発生する考えられるケースもあるので注意が必要です。
もちろんレストラン側に撮影や社内報への掲載許可を得て自ら撮影した写真であれば問題ないのですが、リスクを避けるという点では、許諾を取ると安心です。
なお、レストランが「写真撮影お断り」の方針を打ち出していた場合に料理の写真を撮ることは、著作権法上では問題がなくても、レストランが定めた規約違反にはなるのでご注意ください。

まとめ

社内報制作に関連する権利を理解することは、社内報を円滑に制作するためには欠かせません。
しかし、時として意図せず、法律や権利を意識せずに制作してしまうケースも少なくありません。
例えば、社内報に社員の写真を掲載する際に、肖像権を侵害しているケースがあります。
また、社内報に競合他社の情報を掲載する際に、著作権を侵害しているケースもあります。

権利者の許諾を得ずに著作物や肖像などを無断で使用すると、トラブルに発展する可能性があります。
著作権、肖像権、商標権、パブリシティ権、二次使用など、社内報とも関連のある権利について、その概要とポイントを押さえ、正しく理解し、適切に運用することが大切です。
社内報の制作チームの中でも、権利侵害を防ぐための体制やルールを整えておきましょう。

プロモーションチーム 村上恵美

筆者:プロモーションチーム ディレクター 村上恵美

某音楽配信サイトのプロモーションチームに配属。サイト運営をしながら、主にアーティストのキャッチコピーなどライティング業務にも従事。ECサイトでは毎月100本の商品紹介文を作成し購買率の向上に貢献。2021年 「"はたらき"から、笑顔を」という会社のビジョンを熱く語る上司に魅了されスカイアークへ入社。SOLANOWAのシェア拡大に向け、Web、SNSなどのコンテンツ強化を中心に、プロモーション業務全般のディレクションを担当。

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