未だ終息の兆しが見えない新型コロナウィルスの流行で、生き方そのものを見つめ直す機会が増えたという声を聞きます。仕事もオンライン化を推進しテレワークを中心とする「ニューノーマルな働き方」に移行しつつあります。そして、幾度となく続く自粛要請で"ステイホーム"が奨励されるコロナ禍では、身体そのものを動かす機会もグッと減りました。行動を制限され心身ともにストレスを感じる状態が継続することは健康への影響が少なからずあるものです。奇しくもコロナ禍という未曾有の事態に突入する以前から、働き方改革が進む日本では「従業員の健康を守ることも企業の役目である」という考え方が浸透し始めていました。これが「健康経営」と呼ばれるものです。
健康な毎日を過ごすことは、継続した幸福を示すウェルビーイングの考え方とも密接に関係があります。「健康は最上の善であり、他のあらゆる善の基礎である。」と、フランスの哲学者であるデカルトは言いました。健康を犠牲にしてまで働くという価値観は、もはや過去のもの。自粛や慣れないテレワークなどに順応するため心身ともに気づかず疲弊し「コロナ疲れ」「コロナうつ」に悩む人が増えていることも指摘されています。アフターコロナを見据えて改めて企業で見直しが進められている「健康経営」と、その実現の為に社内報がこれからできることを考えてみました。
目次
●健康経営とは?
●健康経営の実現に求められる7つの行動とは?
●7つの行動を加速させる!社内報の活用アイデア
1:快適性を感じる
2:コミュニケーションする
3:休憩・気分転換する
4:体を動かす
5:適切な食行動をとる
6:清潔にする
7:健康意識を高める
●まとめ
健康経営とは?
「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。従業員等への健康投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待されます。健康経営は、日本再興戦略、未来投資戦略に位置づけられた「国民の健康寿命の延伸」に関する取り組みの一つです。
もともとはアメリカの経営心理学者ロバート・ローゼン氏が提唱したもので、日本では経済産業省が規定しています。健康経営が奨励される背景には、日本で著しく進んでいる少子高齢化があります。健康寿命が世界最高水準となった日本は世界でも有数の少子高齢化国です。少子高齢化は世界中で問題視されており、労働力の確保は企業だけではなく社会全体の課題です。日本でも今までと同じ経済基盤を保って暮らしていく為には、経済活動を支えるための労働力の維持は不可欠です。それも全ては健康に働ける人々があってこそ、実現できるものです。高年齢になっても安心して働ける環境づくりと健康管理への仕組みづくりは国を挙げての急務だと言われています。
また社員の健康問題は、企業にとって健康保険組合の保険料率の引き上げに繋がります。ひいては事業継続のリスクも孕んでいると指摘されており、働く社員の健康を配慮することは企業価値を向上する中でも重要な取り組みです。社員の健康も企業にとって一つの大きな財産だと捉え「健康経営」を戦略的に実施していくことが求められています。
健康経営の実現に求められる7つの行動とは?
健康経営を実現するためには、社員が健康的に働ける環境づくり"健康経営オフィス"が必要です。健康経営オフィスとは、経済産業省の規定によると「健康を保持・増進する行動を誘発し、働く人の心身の調和と活力の向上を図り、ひとりひとりがパフォーマンスを最大限に発揮できる場」と記しています。単に疾病予防に貢献するだけでなく、社員も企業もイキイキとした活気溢れる状態へ導くことを目指しています。これはWHOが定義付けている"健康"の概念「身体的、精神的そして社会的に完全に良好な状態」にも繋がる考え方だと言えます。同じく経済産業省の規定によると、オフィス環境において社員の健康を保持・増進する行動として、以下の7つを挙げています。
- 快適性を感じる
触感・空気質・光・音・香り・パーソナルスペースなどを快適と感じる、姿勢を正す - コミュニケーションする
気軽に話す、挨拶する、笑う、感謝する・される、知る(同僚の業務内容、会社の目標など) - 休憩・気分転換する
飲食、雑談、新聞を読む、インターネットをみる、音楽を聴く、整理整頓をする、仮眠する、ひとりになる、マッサージを受ける - 体を動かす
座位行動を減らす、歩く、階段を利用する、ストレッチや体操を行う、健康器具を利用する
(バランスボール等) - 適切な食行動をとる
間食や昼食の摂り方を工夫する - 清潔にする
手洗い・うがいをする、身の回りを掃除する、分煙する - 健康意識を高める
健康情報を閲覧する、自分の健康状態をチェックする
7つの行動を加速させる!社内報の活用アイデア
こうして7つの行動に着目してみると、あることに気付きませんか?「そういえば社内報でリフレッシュ方法を特集したことがあるかも...」
「ありがとうを伝え合うサンクスカードを取り入れている」
「Web社内報で社員同士がチャットできるコンテンツを運用している」
「社員の業務内容や会社の目標って、社内報で読んだことがある」
などなど、思い当たることがあるのではないでしょうか?そう、この7つの行動は総じて社内報の中で企画として実現できそうな身近なものでもあるのです。
言い換えれば、社内報を発刊することで気づかないうちに「社員の健康を保持・増進する行動」を促していたとも言えるわけです。そうとなれば、社内報を今よりもっと有効に活用しない手はありません。
7つの行動を加速することができそうな社内報の企画を考えてみたので、次号のネタに困ったら是非とも参考にしてみてください。
- 快適性を感じる
・マイデスクのこだわり特集、整理整頓アイデア集
・テレワークが捗る部屋づくりアイデア集
・社員がオススメするお気に入りガジェットツール紹介
・自宅でできる簡単アロマと香りの癒し効果特集 - コミュニケーションする
・実はこんな仕事もやってます!部署紹介
・社内Q&Aで他部署への質問と回答から会社を知る企画
・「あの時はありがとう」言えなかった同僚や上司への感謝を伝える記事 - 休憩・気分転換する
・オフィスの近くでオススメのテイクアウト特集
・リラックス効果があるお茶やハーブティーを特集
・オフィス近辺の昼休みに行けるお散歩ルート・スポット
・デスクでできるコリほぐし体操
・重力ゼロクッションは本当に卵が割れないのか検証 - 体を動かす
・デスクでできるコリほぐし体操
・「座らない」立ち会議を実践・比較して検証
・オフィス活動の消費カロリー一覧表を作る
(ワンフロアを階段で移動したとき、最寄りから駅までの移動など)
・テレワークにオススメ部屋でできる簡単ストレッチ - 適切な食行動をとる
・オフィス近辺のランチスポットをカロリーやジャンル別でリサーチ&紹介
・コンビニフードでバランスを採るメニュー紹介
・コンビニスイーツの新作情報や人気ランキング
・テレワークで役立つ簡単ヘルシーなズボラ飯メニュー紹介
・(社食がある場合)人気メニューやリクエスト企画、メニューのカロリー一覧など - 清潔にする
・オフィスの感染対策についてまとめる
(来客時の対応での注意喚起なども含めて周知)
・アルコール消毒で荒れがちな手にオススメのハンドクリーム特集
・オリジナルの手洗い動画作成プロジェクト企画
・お風呂やシャワーでのリラックス方法をまとめた記事
・福利厚生で行ける温泉やスパ、マッサージなどリラックス施設を紹介 - 健康意識を高める
・健康診断にまつわるコラムなど
(健康診断でどんな疾病の早期発見ができるかなど重要さを改めて記事にする)
・産業医による健康コラム
・心理テスト(ストレスチェックやメンタルチェクなど)
・生活習慣病セルフチェックシート
・これができれば何歳?身体の衰えや体力など簡単なセルフチェック法をまとめる
・健康のために実践していることをアンケート集計
まとめ
社内報で過去に似たような企画を行なっていても、コロナ禍の影響を考慮した内容にブラッシュアップするのもひとつのアイデアになります。厚生労働省のホームページでは健康に関する様々な週間(歯と口の健康週間、肝臓週間など)を設けて啓蒙を行なっているので、社内報の企画立案の参考にしてみてもいいと思います。
また、企業が社員に向けて用意している福利厚生は意外と知られていない場合が多いので、改めて周知するのも社内報の使いどころです。例えば福利厚生で利用できる保養所や温泉施設、スポーツジムなどを紹介し、利用までの申請方法なども併せて記事にすると効果的です。導入企業が増えている"ワクチン休暇"など、社内でどんな制度を社員に向けて整えているかを一度まとめて社内報で発信しておくことをオススメします。
健康経営の実現には明確なゴールはありません。社員の健康を守るということに終わりはないからです。社内報には健康経営の実現に求められる7つの行動を促進させることができるという、とても大きなポテンシャルを含んでいます。プレゼンティーズム(能力が低下した状態)は企業における大きな損失をもたらします。健康診断の実施や福利厚生の充実などは企業が主導を取るべき事項ですが、社内報で定期的に健康に関するコンテンツを展開していくことも健康経営には有益です。プレゼンティーズムの防止と対策、そして健康経営の実現を目指し、頼れるコンテンツとして社内報を今まで以上に活用していきましょう。