「拝啓 夏至の候、皆々様におかれましてはますますご清祥のことと存じます。」
少々かしこまった挨拶から始めさせていただきました。仕事をしていると意外なほど文章を書く機会が多いと感じることはありませんか?特に最近はテレワークの普及で、メールやチャットツールを使用して文字のやりとりをする機会が多くなった方も多いと思います。チャットツールで業務連絡のレスポンスであれば、多少の砕けた言葉でもそれが一種のコミュニケーションとなることもあります。社内でのやり取り以外、取引先や顧客など社外の方に向けたメールや文書ではやはり最低限のマナーは必要です。
相手から丁寧な手紙やメールをいただくと、感謝と共にこちらも襟を正し気持ちが引き締まりますよね。文書でもメールでも社外の方へ送る際には、いきなり本題に入る前にまず初めに書き出しとして時候の挨拶を入れることがセオリーの1つ。
でも、いつも決まった文章をコピーペーストして使っていませんか?よくよく読んでみると、時節に沿っていない言葉を使い回してしまっているかもしれません。丁寧な挨拶をしているつもりが、どこか的外れになってしまっていたらかえって失礼にあたることも。
とはいえ、話す言葉のようにスラスラと時候の挨拶の言葉を思い浮かべるのは難しいもの。そんな時、覚えておくと便利な言葉が「二十四節気(にじゅうしせっき)」です。
日本語には、大和ことばという古来から大切にしてきた言語があります。二十四節気は大和ことばの一種で、季節を示す言葉のことを言います。
日本の四季を春夏秋冬だけではなく、1年の太陽の黄道上の動き(視黄経の15度ごと)を基準として24等分したもの。旧暦(日本では明治6年頃まで使用)では季節を表すために用いられていたものだそうです。それぞれの時候の期間は約15日間とされています。
冒頭で述べた挨拶文では"夏至"という言葉が、その二十四節気のひとつです。ちなみに"夏至"とは6月21日ごろから7月6日ごろにあたる時候の言葉です。夏至は「一年の中で最も昼が長く、夜が最も短い期間」という意味があります。
時候の挨拶の基本型として、「~の候」「~のみぎり」「~の折」など漢語調の表現と合わせて使用します。特に公的な手紙や文書、目上の方に向けて書くときには慣例となっています。
夏至のほかにも、立秋や冬至など、聞いたこと・使ったことがある言葉も、実は二十四節気で使われている言葉なのです。さわりだけでも知っておくと時候の挨拶が今よりスッと頭に浮かぶようになると思いませんか?
ビジネス以外にも、メールマガジンや社内報の制作などでも役に立ちそうな「二十四節気(にじゅうしせっき)」を四季になぞって解説していきたいと思います。
春の6ワード
【立春】りっしゅん(2/4頃~)二十四節気の最初の節気で春の始まりの日
【雨水】うすい (2/19頃~)雪は雨に変わり降り積もる雪が溶けはじめる頃
【啓蟄】けいちつ(3/6頃~) 冬ごもりから目覚めた虫が顔を出す頃
【春分】しゅんぶん(3/21頃~)昼夜の長さがほぼ同じになる日
【清明】せいめい(4/5頃~) 花や草木が芽吹く清らかで明るい季節
【穀雨】こくう(4/20頃~)春の柔らかな雨が降り農作物の種まきに適した季節
二十四節気は春から数え始めます。日本の国花でもある「桜」が入る言葉がないことが意外ですね。
夏の6ワード
【立夏】りっか(5/6頃~)夏の始まりの日
【小満】しょうまん(5/21頃~)陽気がよくなり草木が成長して茂るという意味
【芒種】ぼうしゅ(6/6頃~) 穀物の種をまく時期
【夏至】げし(6/21頃~)昼が最も長く夜が最も短くなる日だが、梅雨の盛りの頃
【小暑】しょうしょ(7/7頃~)梅雨明けが近づき暑さが増していく頃
【大暑】たいしょ(7/23頃~)夏の暑さが本格的になる頃
夏といえば「暑中お見舞い申し上げます」という時候の挨拶が定番ですが、小暑から大暑の頃までが「暑中」の時期。次に述べる立秋を過ぎたら「暑中見舞い」は「残暑見舞い」に変わります。
秋の6ワード
【立秋】りっしゅう(8/7頃~)秋の始まりの日
【処暑】しょしょ(8/23頃~)暑さがおさまりはじめる頃
【白露】はくろ(9/8頃~) 草花に朝露がつきはじめる頃
【秋分】しゅうぶん(9/23頃~)昼夜の長さがほぼ同じになる日で秋の彼岸の中日
【寒露】かんろ(10/8頃~)草花に冷たい露が降りる頃
【霜降】そうこう(10/23頃~)霜が降りはじめる時期
現代では8月は暑さの真っ盛り、9月になっても冷房が欠かせないくらい熱帯夜も当たり前になっていますが、暦の上ではもう秋なのです。
秋の6ワード
【立冬】りっとう(11/7頃~)冬の始まりの日
【小雪】しょうせつ(11/22頃~)山あいには初雪が舞い始める頃
【大雪】たいせつ(12/7頃~) 平地にも雪が降る頃
【冬至】とうじ(12/22頃~)太陽が最も低い位置になり1年で最も夜が長く昼が短い日
【小寒】しょうかん(1/5頃~)寒の入りとも言い寒さが厳しくなる頃
【大寒】だいかん(1/20頃~)寒さが最も厳しい頃
"雪"や"寒"という文字が多く、町じゅうを白く染める雪景色が目に浮かぶような言葉が並びますね。二十四節気では大寒を越えたら春の到来、大寒を耐えてようやく春が訪れ新しい一年がはじまります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
祝日でお馴染みの言葉があったり、テレビのニュースなどでもよく聞く言葉があったり、身近に感じる部分があるものですよね。言葉づかいもひとつのコミュニケーションと捉え、TPOに合わせて言葉や文章を使い分けるスキルもテレワークが進む現代には必要になるのではないでしょうか。二十四節気の時候をひとつの目安にして、いつもと違った挨拶文から始めてみると新しいコミュニケーションが発見できるかもしれません。