人的資本経営で注目される「従業員エンゲージメント」について

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「人的資本経営」という言葉が注目を集めています。
2008年のリーマン・ショック以降、金融資本主義(Financial Capitalism)から人的資本主義(Human Capitalism)が広がり、また近年では環境・社会・企業統治を重視するESG投資が世界的なトレンドとなっています。
こうした流れを受け、人的資本、すなわち自社の企業価値を高める要素の一つとして「従業員エンゲージメント」に対する取り組みとその重要性が高まっています。
そこで今回は「従業員エンゲージメント」とは何か、なぜ大切なのか。
従業員エンゲージメントを高めるメリットや重要性などをまとめました。

人的資本経営について

「人的資本経営」について、経済産業省は以下のように定義しています。

人的資本経営とは、人材を資本として捉え、人材の価値を最大限引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方です

参考:経済産業省 人的資本経営 ~人材の価値を最大限に引き出す~

従業員が持つ能力や知識を資本とみなして投資の対象とし、企業価値を持続的に向上することを目的とした新しい経営の在り方です。
人材育成にはさまざまな教育コストがかかりますが、人材を資本のひとつとして捉えると、人材育成にかかる費用はコストではなく投資と考えることができます。
VUCA時代と言われる現代において企業価値を高めるためには、人材をコストや資源ではなく「投資の対象となる資本」として捉え、人材の価値を引き出す経営の在り方が不可欠だと言われています。
同時に、人的資本に関する情報はその企業の将来性を判断する指標として、投資家などステークホルダーが情報開示を求める傾向にあります。

人的資本経営へ関心が高まる背景

なぜ人的資本経営へ関心が高まっているのでしょうか。
その背景として3つのポイントがあげられます。
 1:少子高齢化による人手不足
 2:人材と働き方の多様化
 3:ESG投資の浸透

1:少子高齢化による人手不足
内閣府が発表している「人口減少と少子高齢化」によると、生産年齢人口(15〜64歳)は1995年をピークに減少しており、2065年に約4,500万人となる見通しです。
2020年前半と比べると約2,900万人の減少となり、少子高齢化の動きは加速していくと見られ、人手不足の要因となっています。
また、DX推奨であらゆる業務のデジタル化が進む一方で、DXを支える専門技術を持つ人材も不足していると言われています。
こうした人材不足は今後も続くことが予想されており、人的資本経営によって自社の従業員一人ひとりのスキル向上を目指すことで、自社が持つ人的資本の価値を高めていくことが求められています。

2:人材と働き方の多様化
非正規雇用や外国人従業員の増加など、企業の人材構造における変化も人的資本経営へ関心が高まる要因の1つです。
働き方改革などの影響もあり、人材と働き方が多様化している現代では、これまでのような画一的な人材管理では立ち行かなくなっていると言われています。
従業員一人ひとりの事情・状況に合わせた働き方で、個の能力を活用し、それぞれの価値を最大限に引き出していくような人的資本経営が求められています。

3:ESG投資の浸透
冒頭でも触れましたが、人的資本経営へ関心が高まる背景にはESG投資の浸透があげられます。
ESGとは、「環境(Environment)」「社会(Social)」「ガバナンス(Governance)」の3要素のことで、これらに配慮して投資先を選定することを「ESG投資」と言います。
2008年のリーマン・ショック以降、金融資本主義(Financial Capitalism)から人的資本主義(Human Capitalism)が広がりました。
ESG投資に注目する投資家が増えたことにより、ESGに配慮した経営に注力するようになった企業も増えています。
また、ESGのなかでも、人的資本は「社会(Social)」に関連することから、ESGに配慮した経営の一環として人的資本投資に力を入れるようになりました。
こうした流れを受け、人的資本、すなわち自社の企業価値を高める要素の一つとして「従業員エンゲージメント」に対する取り組みとその重要性が高まっています。

従業員エンゲージメントとは

人事領域における「従業員エンゲージメント」とは、従業員の企業への信頼を意味する言葉です。
従業員が会社の向かっている方向性に共感し、自発的に貢献しようとする意欲のことを指しています。
一言で表すならば「従業員の企業に対する信頼の度合い」と言えますが、わかりやすいようで実はその定義は明確に定まっていないのが現状です。
もともと「engagement(エンゲージメント)」には「契約」という意味があり、従業員と企業における双方向の強い結びつきを表現した言葉だと言えるでしょう。

日本企業の従業員エンゲージメントは世界最低水準という調査結果もあり、VUCA時代と呼ばれる予測不可能な現代を生き抜くには、従業員エンゲージメントの改善が重要だと言われています。

参考記事:知っておきたいエンゲージメントの話

従業員エンゲージメントが重要視される背景

なぜ従業員エンゲージメントが重要視されるのでしょうか。
その背景として主に以下の4点があげられます。
 ・働き方改革の促進による人材の流動化
 ・価値観の多様化
 ・終身雇用・年功序列制度の崩壊
 ・リモートワーク標準化によるコミュニケーションの非対面化

多様で柔軟な働き方を自分で選択するという「働き方改革」の影響を受け、転職がもはや当たり前の時代だと言われています。
そして、ワークライフバランスという言葉が示すように、従業員が企業や仕事に求める価値観が多様化しています。
こうした価値観の多様化や働き方改革により、従来の日本企業では多くを占めていた終身雇用や年功序列制度が薄れ、キャリアアップを求めて転職する人が増え、人材の流動化が進んでいます。

またリモートワーク標準化が進み、企業内で従業員同士の直接的なコミュニケーションが減少していることから、従業員のモチベーションやエンゲージメントの低下を危惧している企業が増加中です。
従業員のモチベーションやエンゲージメントの低下は離職の原因にもなるため、モチベーションやエンゲージメントの改善・向上が改めて重要視されています。

従業員満足度と従業員エンゲージメントの違い、混同されやすい用語

従業員エンゲージメントと混同されやすい言葉に、「従業員満足度」があります。
従業員エンゲージメントは、理念への共感や自発的な貢献を意味していますが、従業員満足度は待遇や環境、報酬といった居心地の良さに重きが置かれている点で違いがあります。
また、従業員エンゲージメントの向上は企業の業績向上と関連しますが、従業員満足度は向上することが必ずしも業績向上に結びつくものではない点で異なっています。

他にも混同しがちな以下の類似語との違いを把握しておくと、従業員エンゲージメントをより深く理解できるでしょう。
 ・ロイヤリティ
 ・コミットメント
 ・モチベーション
 ・ワークエンゲージメント

ロイヤリティ
ロイヤリティとは、従業員の会社に対する忠誠心や帰属意識を示しています。
従業員だけではなく顧客に対しても使われる用語です。
「従業員は所属する会社に奉仕する」という主従の意味合いが強く、会社の方が優位な立場になります。
対して、エンゲージメントは会社と従業員が対等の立場となる点で違いがあります。

コミットメント
コミットメントとは、責任をもって引き受ける・参加するという意味を示しています。
企業が従業員に対して行動や結果を求め、従業員はそれに応える状態とも言えます。
従業員エンゲージメントが自発的な貢献と意欲によって行動するのに対して、コミットメントは企業が従業員に対して判断を迫る点で違いがあります。

モチベーション
モチベーションとは、やる気や動機といった従業員自身の心理状態を示しています。
従業員は自らのために行動を起こします。
対して、従業員エンゲージメントは従業員と企業の関係性を示す言葉です。
従業員は企業に貢献するという気持ちを持って行動を起こします。

ワークエンゲージメント
ワークエンゲージメントは、従業員の仕事に対するポジティブな心理状態を示しています。
活力・熱意・没頭といった個人の仕事に対する姿勢や状態のことです。
対して、従業員エンゲージメントは仕事に限らず企業理念への共感や仲間との信頼関係など、多様な要素を含む点で違いがあります。

従業員エンゲージメントが低下することで起こる問題

では、従業員エンゲージメントが低いとどんな影響があるのでしょうか。
実際に起こりえる問題として、主に以下の3点があげられます。
 ・仕事に対するモチベーションが低下する
 ・人材が流出し離職率が高くなる
 ・コミュニケーション不足で風通しが悪くなる

・仕事に対するモチベーションと生産性が低下する
従業員エンゲージメントが低い企業は、従業員が仕事にやりがいを感じることができず、モチベーションが低い状態で働いてしまう傾向があります。
モチベーションの低い従業員が多くなると「ネガティブな発言が増える」「ミスが増える」といったマイナス行動を引き起こし、結果として企業の生産性が低下してしまいます。

・人材が流出し離職率が高くなる
従業員エンゲージメントが低い企業は、従業員からの信頼を得ることができていない状態と言えます。
従業員が「この企業で働き続けたい、共に成長し貢献したい」という想いを抱くことができず、心理的価値が低い状態です。
このような状態では、たとえ労働条件の良い企業であったとしても、従業員はもっとやりがいを感じられる仕事を選ぶようになり、結果として人材が流出し離職率が高くなってしまいます。

・コミュニケーション不足で風通しが悪くなる
従業員エンゲージメントが低い企業は、従業員が不満や不安を感じていることから、信頼関係を築き上げることができずコミュニケーションが不足する傾向にあります。
十分なコミュニケーションが取れないと、従業員は働きにくい環境だと感じてしまい、企業内の風通しが悪くなるだけでなく業務にも支障が出ます。
何か問題が発生した場合にも対応が遅れたり、良いサービス・品質を提供できなくなってしまいます。
その結果、企業の業績や信用にも悪影響を及ぼすことが考えられます。

従業員エンゲージメントを向上させるメリット

さまざまな研究結果から、従業員エンゲージメントを向上することは、企業の生産性の向上や離職率の低減などさまざまなメリットがあることがわかっています。
また、従業員がやりがいや働きがいを得られるといった心理面でも良い影響を与えると言われています。
従業員エンゲージメントを向上させるメリットを4つのポイントでまとめました。
 ・モチベーションが高まる
 ・コミュニケーションが活性化しチームワークが高まる
 ・生産性が高くなり顧客満足度が向上する
 ・離職率を下げる

・従業員のモチベーションが向上する
従業員エンゲージメントが高まると、従業員は自社に対する信頼感や愛着を持てるようになり、自分の仕事に価値を見出すことができます。
仕事に誇りを持って取り組めると、仕事に打ち込みやすくなるため、従業員のモチベーションが高まります。
与えられたことだけやるという受け身の姿勢から、自発的に貢献したいと自分ごと化して積極的に取り組んでいく姿勢への変化が期待できるでしょう。

・コミュニケーションが活性化しチームワークが高まる
従業員エンゲージメントが向上すると、貢献意欲の高い従業員が増え、建設的な意見が生まれやすくなります。
ポジティブなアクションが増えると一人ひとりの心理的安全性が高まり、信頼関係が構築され、コミュニケーションが活発になります。
コミュニケーションが円滑になるとチームワークが高まり、結果として組織全体が活性化されます。

・生産性が高くなり顧客満足度が向上する
従業員エンゲージメントが高まると、仕事にやりがいを感じることができ、熱意を持って取り組めるようになり、従業員のモチベーションが高まります。
チャレンジしようという前向きな姿勢が生まれ、業務効率化を促進し、企業全体の生産性が高まります。
結果として製品の質やサービスが向上し、顧客満足度が向上することにつながります。

・離職率を下げる
従業員エンゲージメントが向上することで、従業員は自社に対する信頼感を持つことができます。
自社で働くことにやりがいを感じ、従業員の満足感が高まると企業に対する愛着心が芽生えます。
「この会社で成長したい」と感じる従業員が増えることで、結果として離職率を下げ、人材の定着が期待できるでしょう。

従業員エンゲージメントを高める3つのポイント

では、従業員エンゲージメントを高めるためには具体的にどうすれば良いのでしょうか。
従業員エンゲージメントを高めるのに有効な施策を、以下の3つのポイントにまとめました。
 1:企業理念やビジョン、ミッションを浸透させる
 2:働きやすい環境の構築とワークライフバランスを推進する 
 3:社内コミュニケーションを取りやすい環境を整備する

1:企業理念やビジョン、ミッションを浸透させる
1つめは「企業理念やビジョン、ミッションを浸透させる」ことです。
企業に対する信頼や愛着は、企業理念やビジョン、ミッションを理解することからスタートします。
従業員一人ひとりが、企業理念やビジョン、ミッションを理解し、自身の理想や目標が明確になることで、それを実現するためにはどうすべきかを考え、行動するようになります。
同じ目標に向かって一体感を持って仕事に取り組めるようになると、やりがいを感じることができ、自ずと従業員エンゲージメントが向上するでしょう。

2:働きやすい環境の構築とワークライフバランスを推進する 
2つめは「働きやすい環境の構築とワークライフバランスを推進する」ことです。
働きづらい環境では従業員のモチベーションを維持することはできません。
また、従業員が能力を最大限に発揮しなければ、モチベーションの維持だけでなく、仕事で貢献することはできません。
能力を発揮していくためには、ワークライフバランスを整えることも重要です。
例えば、テレワークやフレックスタイムの導入など、プライベートの時間も大切にできる制度を導入したり、従業員にとって働きやすい環境を構築することも必要です。

3:社内コミュニケーションを取りやすい環境を整備する
3つめは「社内コミュニケーションを取りやすい環境を整備する」ことです。
従業員エンゲージメントを高めるためには、信頼関係の構築が不可欠で、いつでも安心して自分の意見や希望を発言できる、心理的安全性が必要です。
社内コミュニケーションを取りやすい環境を整備し、相互理解を深めることが心理的安全性につながります。
1on1ミーティングを実施したり、部署や拠点またいだメンバーと対話したりディスカッションを行うワークショップなどを企画して、オープンなコミュニケーションが取れる機会をつくるのも効果的です。

まとめ

ESG投資の増加や2023年に義務化予定の「人的資本情報の開示」の流れを受けて、自社の企業価値を高める要素として「従業員エンゲージメント」に対する取り組みとその重要性が高まっています。
従業員エンゲージメントとは、「会社に貢献したい」という従業員の自発的な意欲のことで、愛着心や愛社精神とも訳されます。
企業と従業員が信頼関係を構築できなければ、こうした自発的な意欲や愛着は生まれません。

従業員エンゲージメントを高めるには、コミュニケーションを円滑にし、理念やビジョンを共有して、従業員一人ひとりが仕事に誇りとやりがいを感じることが必要です。
そして、従業員が安心して働ける環境をつくるためには長期的な取り組みが欠かせません。

経済活動のグローバル化が進み、終身雇用に代表される日本型雇用が変化する中で、従業員エンゲージメントを高める取り組みは今後、ますます重要視されていくと言われています。
前述の「従業員エンゲージメントを高める3つのポイント」などを参考に、自社の改善点を見つけるためにも、まずはコミュニケーション課題の洗い出しなどから始めてみてください。

また、従業員エンゲージメントを高めるためには、一人ひとりのモチベーションを適切に管理することが不可欠です。
従業員のモチベーションを可視化し、管理するシステムなどを利用してみることも1つの方法です。
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関連サイト:モチベーション管理システム13選!特徴、費用など徹底比較

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筆者:プロモーションチーム ディレクター 村上恵美

某音楽配信サイトのプロモーションチームに配属。サイト運営をしながら、主にアーティストのキャッチコピーなどライティング業務にも従事。ECサイトでは毎月100本の商品紹介文を作成し購買率の向上に貢献。2021年 「"はたらき"から、笑顔を」という会社のビジョンを熱く語る上司に魅了されスカイアークへ入社。SOLANOWAのシェア拡大に向け、Web、SNSなどのコンテンツ強化を中心に、プロモーション業務全般のディレクションを担当。

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