皆さんは、文章力に自信はありますか?
小説家やライター、ブロガーといった執筆業ではないから文章力は特に必要ない......とは言えない時代です。ニューノーマルな働き方が進み、メールやチャットなどテキストによるコミュニケーションが主流へと変わりつつあります。内容が理解しづらいメールが来て確認に時間がかかったり、仕事が進まなかったといった経験がある人も多いのではないでしょうか。伝わらない文章は、それだけで時間のロスとなります。
そこで必要なのが、文章力です。
正確に、そして迅速に相手に伝わる文章を書くことが、ビジネスを円滑に進めるためには欠かせません。わかりやすい文章は、相手が読みやすい文章とも言えます。
目次
●文章力を底上げするための11のポイント
1:一文は60文字以内を目安に
2:一文一意で詰め込まない
3:主語と述語を正しく
4:文末に変化を付ける
5:口語表現は文語表現に
6:「てにをは」を正しく使う
7:句読点を適切に使う
8:不要な接続詞を使わない
9:指示代名詞を使い過ぎない
10:修飾語と被修飾語は近づける
11:校正の前に推敲する
●まとめ
文章力を底上げするための11のポイント
文章の書き方は習う機会がない反面、ビジネスではとても重要なものです。"わかりやすくて読みやすい文章"を書くには、いくつかのポイントがあります。今回は文章力を底上げしてくれる11のポイントをまとめてみました。自分の文章がNGポイントを抑えていないかチェックしてみてください。
- 一文は60文字以内を目安に
長い文章はそれだけで読みずらさを感じさせます。最近はスマホやタブレットを介して文章を読むことも多いため、できるだけ短くまとめることが重要です。一説では、人の集中力は8秒しか維持できないと言われています。8秒で読める文字数の平均は70~80字ですが、メリハリをつけるためにも一文は60文字以内を目安にするとベターです。 - 一文一意で詰め込まない
一文一意とは、ひとつの文章でひとつのことだけを言う、という考え方です。文章中の「主語」「述語」「修飾語」をできるだけシンプルに配置します。一文が短くまとまるようになるので全体的にすっきりした印象になります。一文一意は書きやすいだけでなく、読みやすい文章を作ることができます。
例文で比較してみましょう。
修正前
暑くなりそうだったが、曇り空だったのでコートを着て出かけたのですが、やがて晴天に変わり日差しが強くなり、その日は1日コートを脱いで過ごしました。
↓
修正後
暑くなりそうだった。曇り空だったので私はコートを着て出かけた。しかし、やがて晴天に変わり日差しが強くなり、コートを脱いで1日を過ごした。
文章を一文一意で区切り、接続詞(しかし)を補いました。修正前のように「が」を多用してしまうと文章が間延びしてしまうので注意しましょう。 - 主語と述語を正しく
主語と述語がつながらない文章を「ねじれ文」と言います。
例えば以下の文章。
『旅行は私に人生の楽しみを教えてくれたし、人生の豊かさにも気付いた』
ここでの主語は「旅行は」です。
前半の述語「教えてくれた」は自然につながりますが、後半の述語「気付いた」は不自然でつながっておらず、ここで主語と述語の関係にねじれが起きています。「豊かさにも気付いた」のは「私」なので、ねじれを直すと次のようになります。
『旅行は私に人生の楽しみを教えてくれたし、人生の豊かさにも気付かせてくれた』
文章が長くなって主語と述語が離れるほどねじれが起こりやすくなります。なるべく短く文章を組み立てることがねじれを防ぐポイントです。 - 文末に変化を付ける
文末は文章の印象やリズムを左右します。「~ます」「~です」など同じ語尾=文末表現が続く文章は、単調な印象を与えてしまいます。単調な文章は読みにくさにもつながるので、文末に変化を付けリズムを作りましょう。同じ文末表現を使うのは連続して2回まで、3回以上は避けるのがベターです。
例文で確認してみましょう。
修正前
単調な文章とは語尾に同じ言葉を連続で使うことです。
『です』『です』と続くと、小学生の日記のようです。
こうならないように、書くときには気をつけたいところです。
↓
修正後
単調な文章とは語尾に同じ言葉を連続で使うことです。
『です』『です』と続くと、小学生の日記のように見えてしまいます。
こうならないように、書くときには気をつけたいところですね。
語尾に『です』が3回続いていた文章を修正してみました。文末表現が変化するだけでリズムができ、読みやすくなったことがわかります。文末表現にバリエーションを持たせるようにしましょう。 - 口語表現は文語表現に
会話をする時の言葉=口語表現は、文章には合わない場合があります。例えば「ら抜き言葉」や「すごく~」「めちゃ~」といった表現です。ブログなど個人的な文章では問題はないですが、ビジネスシーンでは常識とマナーを問われてしまいます。口語表現でら抜き言葉の「食べれる」は、文章にする時は「食べられる」が正解です。「すごく大変」「めちゃ大変」は「とても大変」など文語表現に直しておきましょう。 - 「てにをは」を正しく使う
「てにをは」とは言葉をつなぐ「助詞」の総称です。
文章のニュアンスを変えたり前後の関係性を明確にする役割もあります。助詞は「てにをは」の4文字だけではなく、格助詞・接続助詞・副助詞・終助詞と4種に分類される幾多の言葉の総称です。
花に咲く⇨花が咲く
夢が掴む⇨夢が掴む
私へ走り出す⇨私は走り出す
このように、助詞である「てにをは」を間違って使用した文章は意味が伝わりません。
正しい「てにをは」に修正しましょう。
また「てにをは」が1文字変わるだけで、文章のニュアンスが大きく変化します。
例えば
「紅茶でいい」
「紅茶がいい」
どちらも「紅茶を飲む」ことを伝える文章ですが、上下でニュアンスの違いを受けませんか?上のように「紅茶でいい」の場合は、紅茶じゃなくても別にいい、と本意ではないような印象を受けます。逆に下の場合は「紅茶が飲みたかった」と希望する気持ちが伝わります。
他にも
「紅茶が好き」
「紅茶は好き」
この場合「紅茶」は対比の対象として使われています。上の場合は「(色々な飲み物の中で私は)紅茶が好きだ」と複数の中から選択した意識が込められています。逆に下の場合は「(他は嫌いだが)紅茶が好きだ」と何かと比較して選択した意識を感じます。
このように助詞はその言葉だけで意味を持つものなので、使い分けに注意が必要です。文章を読んでいて何か違和感を感じたら「てにをは」を見直してみましょう。 - 句読点を適切に使う
文章に使われる「。(句点)」と「、(読点)」を句読点と言います。広義では「!(感嘆符)」や「?(疑問符)」も句読点に含むこともあります。読み手は句点、読点で区切りながら読み進めていくので、適切に使いこなさなければなりません。例えば、一文章・60文字の中に読点が1つもない場合、区切りがないのでかなり読みにくいです。
また、読点は読むときの息継ぎの場所ではなく、意味の切れ目や固まりを視覚的に示すものです。読点が適切に打たれていれば、読み手はテンポ良く読み進めることができ、内容を理解しやすくなります。文章のどこに読点や句点を打つべきか迷った時は、実際に声に出して読んでみると掴みやすくなります。 - 不要な接続詞を使わない
「しかし」「だから」「つまり」「また」など接続詞は、次に来る文章を予告したり、前後をつなげる役割があります。読み手の理解を助けるのに有効ですが、使いすぎるとくどくて読みづらい文章になるので注意が必要です。接続詞がなくても意味が通る場合も多いので、不要な接続詞は使わないようにしましょう。
また、同じ接続詞をつなげるのは間違いです。例えば「逆説」の意味を持つ接続詞「しかし」と「ですが」を続けて使用してしまう場合。「しかし~である。ですが~になるでしょう。」と連続で使ってしまうと、意味が通りません。読み手が理解しづらくなるので、接続詞の連続使用は避けるようにしましょう。 - 指示代名詞を使い過ぎない
「この」「それ」「あの」「これ」などの指示代名詞は、文章を短く置き換える便利な言葉です。文章をスッキリさせるためには指示代名詞は必要不可欠ですが、多すぎるとそれぞれが何を指しているのかわかりにくなります。読み手が混乱してしまい、文章の伝わりにくさや曖昧さを助長してしまうので注意しましょう。 - 修飾語と被修飾語は近づける
修飾語とは「説明する言葉」で、被修飾語とは「修飾語によって説明される言葉」を指します。例えば「青い空 」と言う言葉は、青いという言葉が空について説明しているので「青い」が修飾語、「空」が被修飾語です。修飾語と被修飾語は「なるべく近くに置く」という原則があります。この修飾語と被修飾語が離れすぎたり、修飾語が長すぎると読みづらくてわかりにくい文章になります。
例文で見てみましょう。
「今日から三日以内に、A社のB様からK部署に依頼があった発注について確認します。」
この場合「三日以内」が修飾語で「確認します」が被修飾語です。間に他の文章が挟まっているため、少しわかりづらくなっています。
そこで下記のように修飾語と被修飾語を近づけるよう修正すると意味が通りやすくなりました。
「A社のB様からK部署に依頼があった発注について、三日以内に確認します。」
修飾語と被修飾語は近づける原則を忘れないでおきましょう。 - 校正の前に推敲する
文章を書き終えた後に見直す習慣がある人は多いと思います。でもその見直しとは「誤字や脱字がないか?」という観点からの作業になっていませんか?文章力をあげるためには「推敲」が必要です。推敲は言葉使いや表現をより良くするといった意味で、文章を練り直して洗練させていくことを指します。
似た言葉で「校正」がありますが、これは文章の誤字脱字や誤植を見つけて修正することです。推敲を行なった後に校正をする、と言うのが本来の流れとも言えます。自分が書いた文章をブラッシュアップする推敲という作業を行うことは、結果として文章力が上達することにつながります。書くことが苦手な人ほど、推敲に時間をかけてみると良いでしょう。
まとめ
文筆家のような誰もが唸る文章を書くには、生まれ持った才能やセンスが必要とだと思います。しかし、ビジネスや日常で求められるのは「わかりやすい文章」を書くことです。言葉の意味に留意しながら、文章に関する一定のルールを理解し、コツを掴むことが上達への近道です。上記にあげた11のポイントを意識してみるだけで、見違えるように読みやすい文章が書けるようになると思います。