当社のビジョン「"はたらき"から、笑顔を」に共感いただける企業や人に、実際に働きの中から笑顔を生み出す秘訣や成功事例などについて取材させていただく『はたらき見聞録』シリーズ。
後編ではインタビューにお答えいただいたみなさんの素顔に迫ります。引き続き、noteの徳力基彦さんに取材をさせていただきました。
本編はこちら
ブログに人生を救われたときに得た教訓を多くの人へ伝えていきたい
―― 後半戦、改めましてよろしくお願いいたします。
それでは、はじめに徳力さんにとっての仕事のやりがいを教えていただけますか?
私はブログに人生を救われたことがあるのですが、同じようにブログやSNSで救われる人を増やしたいと常々思っています。
20年ほど前、NTTから心機一転ベンチャー企業へ転職したのですが、入社早々にクビも覚悟するような大きな壁に直面したことがありました。そのとき、ブログを書きはじめたことでその壁を超えることができて、文字通りブログやSNSに人生を救われる経験をしたんです。
その後、ソーシャルメディアマーケティング支援の会社を経営していたのですが、そこを退任する際に、大げさな言い方で言うと残りの人生は自分がブログやSNSから得たものに恩返したいなと考えました。
じゃあ、ブログやSNSに恩返しができそうな会社って日本にいくつあるのかと言われたら、noteしか思いつかなかったんですよね。で、加藤さんに無理矢理お願いしてnoteに入れていただいた次第です。
当時の私のように、壁にぶつかってもブログやSNSをうまく活用することで救われる人がいるのではないか?そういう人をもっと増やせるんじゃないか?と思っています。
―― 同じような境遇の方々への貢献心が原動力になっているのですね。
その中で、徳力さん自身も何か楽しく働くために心がけていることなどはございますか?
私が心がけていることは、積極的に新しい人との出会いの数を増やしコミュニケーションをとることです。
コロナ禍でイベントが全くできなくなった期間はとてもつらかったです。先ほどのブログに人生を救われた経験の話に戻るのですが、当時はとにかく社内でがむしゃらに仕事をすることが重要だと考えていました。でも、実はどんどん外に出て、いろいろな人とつながることが自身の経験にもつながりますし、結果的に新しい仕事が増えるので会社にも貢献できていることを、ブログやSNSを通じて気付くことができたんです。
それからは毎週のように出会いを求めていろんなイベントに顔を出すようになりましたし、その縁を自分の仕事の糧にしています。
―― 徳力さんの抜きん出る活動量はコミュニケーションそのものを楽しんでいるからこそなんですね。
コミュニケーションの質についても何か意識していることはございますか?
できるだけポジティブなコミュニケーションをとるように心がけています。
コミュニケーション関連の話は本編でいろいろ話してしまったので、ここでは余談になるのですが、最近「マルハラ」の話があったじゃないですか。目上の方から送られるテキストの末尾に「。」があると一部の方は強い圧力を感じるという。
私もマルハラの話を意識していたわけではないのですが、チャットなどテキストだけのコミュニケーションでは、例えば語尾を伸ばす(語尾に「ー」を付けて)などして柔らかい文になるようにしてますね。私自身の感覚としても「了解です。」のような「。」で終わる返答はぶっきらぼうな印象がもともとあったので。
140文字で表現しなければならないX(旧Twitter)が、ニュアンスが伝わらずに炎上しやすいのはそういうところだと思います。
そのため特にテキストのコミュニケーションではポジティブな感情が乗るように心がけています。
―― テキストは表情や間を駆使できず表現が難しいですよね。末尾の「ー」は私もつい多用してしまいます。
続いて「はたらき見聞録」の中で最も回答が難しいと言われてしまう質問をさせてください。
徳力さんが働く上で一番大切にされていることを一言の単語で表すとズバリどんな言葉が当てはまりますか?
急にくると本当に難しいですね。
本編でも言いましたが、仕事でも何でも楽しめるかどうかを一番大切にしているので、一言で表すとなるとズバリ「エンジョイ」はどうでしょうか。
―― 難しい問いにも関わらずビシっとご回答いただきありがとうございます。
まずは自分が楽しめることが大切という点は私も本当にそうだなと思って共感してしまいます。
それでは「エンジョイ」をイメージした上で、徳力さんが今後一緒に仕事をしてみたい方はいらっしゃいますか?
具体的にこの人というより、何かに一生懸命取り組んでる方の話を聞くのがすごく好きなので、そういう方々と一緒に仕事したいと思いますね。
企業のオウンドメディアやSNSを担当されているPR・マーケティング関連の方へインタビューさせてもらう仕事が多いのですが、インタビューをしている時間が一番好きかもしれません。というのも、みなさん本気でいろいろ試行錯誤されているので、そういう方たちの話を聞いてるときが一番楽しいです。
―― 熱量がある方との対話は本当に楽しいですよね。私も徳力さんのお話を聞きながらワクワクしています。
それでは、いろいろな方と出会う中でお互いに「笑顔が生まれた体験」などあれば教えていただけますか?
ここ最近でうれしかったのはスカイアークさんにも参加していただきましたが、2月に法人note勉強会を開催できたことです。
コロナの影響で、ここ数年はオンラインのイベントが多く、オフラインの勉強会は久しぶりでした。そこで参加者の方々が楽しそうに会話をしたり、つながっていく様子を見て、やっぱり私はリアルなコミュニケーションが好きなことを再確認しました。
note自体はオンラインコミュニケーションを促進するツールですが、オフラインも含めたリアルな横のつながりにどう貢献するかというテーマもあります。だから、勉強会でみなさんの笑顔を見たときは本当にうれしかったし、その場を作れて本当に良かったと思っています。
―― 応募者数や参加率、リピート率のようないわゆるマーケティング指標も大切ですが、笑顔の量が何よりモチベーションにつながりますよね。
続いては、徳力さんの3年後、5年後、10年後の展望を教えていただけますか?
自分の何年後というよりは、私が今やっていることが「普通」のことになるようにしたいなと思っています。
―― ここで言う「普通」とは当たり前のことのように一般化されるといった意味合いでよろしいですか?
そうです。私は『自分の名前で仕事がひろがる「普通」の人のためのSNSの教科書』という本を出版しているのですが、日本で会社員がSNSをつかっていることを普通のことにしたいという願いから執筆したんです。
日本ではどうしてもSNSを積極的に活用する人=インフルエンサーなどの仕事として活用してる特殊な人と見られがちな風習が少なからずあると思うんです。だから、私が会社員としてブログをつかって人生が救われたようなことが、世の中でも普通に起きて欲しいと思って啓発活動をしています。
理想としては、10年後には「SNSをつかいましょう」と言わなくても当たり前のように会社員がつかっている世界になっていたらうれしいですね。
―― すごく理想的です。まさに本編でも触れた「全員広報」も普通のことのように実現されている世界観ですね。
ただ、ちょっと残念なのはSNSは今すごくネガティブなエネルギーが強いんですよね。
10年前はシンプルに「みんなでSNSつかいましょう」って言えましたが、最近はSNSをつかうリスクが大きくなってきてることも感じています。
先日、J-WAVEさんのラジオ企画で大学の講師役をしたときも、学生からSNSのコンプライアンスに関するリスクについて質問がきたんです。企業の経営者向けの研修で出てくるような質問が学生からも出る時代になっちゃったんだなと思いました。本来は学生からしたらSNSをつかうメリットのほうが大きかったはずなんですけどね。
だから、3年後、5年後、10年後に自分が何をしていたいかということを考えるよりも、今は日本のSNS市場がポジティブに向かうことだけを考え啓発活動に邁進したいと思っています。
―― 確かにリスク管理は重要ですが、あまり縮こまってパフォーマンスを下げたくないですよね。
それでは、ポジティブを意識されている徳力さんが最近ハマっていることは何かありますか?
Yahoo!ニュースでエンタメ系の記事を書くことにハマっています。
昔は、SNSが炎上することには決まった理由があるので、それらの理由を学んで防ぐ方法についての記事を量産していたのですが、最近はもう理由は関係なく炎上する時代になってしまっているんですよね。極端な話、炎上していなくてもメディアが炎上してると書いただけで本当に炎上してしまう時代になってしまっています。だから、数年前にネガティブと向きあう記事を書くことから卒業して、ポジティブな記事だけ書くことに決めたんです。
―― ネガティブな内容と向き合う守りの姿勢から、どうポジティブな空気をつくるかという攻めの姿勢へシフトされたということですね。
その通りです。そしてポジティブな記事を書こうと考えたら、やっぱりエンタメほど適しているカテゴリはないなと思いましたね。特に日本のコンテンツが海外に出ていくケースを応援する記事を一生懸命書いてるのですが、これが自分自身でも書いてて楽しいのですごくハマってます。
あとは、今はSNSをポジティブにつかうなら「推し活」かなという流れもあるので、そこにも新しい可能性を個人的には感じています。
―― まさに徳力さんの中心には「エンジョイ」があり、そうなるために日々いろいろなことを試されているのですね。私も徳力さんのセミナー・イベントにもっと参加してエンジョイスキルを磨かなければと痛感しました。
後編はもう最後の質問となってしまうのですが、インタビューを読んでいただいた方々へメッセージをいただけますでしょうか?
SNSをつかうことが「普通」になるためには、当たり前のことですが、みなさんがSNSを好きである必要があります。ただ、現時点では、一部のネガティブ行為を収益源にするインフルエンサーの常識の方が普通になってしまっています。
車の運転で例えるなら、みなさんは信号を守り、車を擦らないように運転をするわけですが、どんどん他の車にぶつけたり、敵を作ったりと悪目立ちをする暴走族のようなインフルエンサーが増えています。そして、その行為をかっこ良いと影響されてしまう若い人がでてきます。これが「普通」になってしまうと、SNSがどんどんネガティブな場所になってしまうので、みんなが「SNS上での暴走行為はかっこ悪い」と言える状態にしていかなければなりません。
そのため、みなさんにはモラルを守りつつ、楽しく「普通」にSNSをつかっていただきたいということを締めの言葉にしたいと思います。
―― 今回のインタビューを通じて徳力さんの献身的でポジティブなお人柄がとても伝わりました。そしてインタビュー本編も含め、今後企業がオウンドメディアやSNSをどのように活用していくべきなのか事例なども交えて参考になるお話をいくつもお聞かせいただきました。
徳力さん、本日はありがとうございました。
(取材日:2024年3月18日 / 取材:柴田将之 / 編集:村上恵美)
取材にご協力いただいた方
取材に答えていただいたのは、note株式会社の徳力さんです。メディアプラットフォーム「note」は「だれもが創作をはじめ、続けられるようにする」をミッションに、表現と創作の仕組みづくりをしています。クリエイターのあらゆる創作活動を支援し、思い思いのコンテンツを発表したり、note proを活用して企業や団体が情報発信を行っています。
note pro 公式Youtubeチャンネル