ニューノーマルな働き方が進む現代では、企業におけるコミュニケーションにも変化が起きています。
最も大きな変化と言えるのが、テレワーク標準化の影響によるオンラインでのコミュニケーションが増えたことではないでしょうか。
これまで顔を合わせることで少なからず取れていたコミュニケーションが、非対面下ではその数が減ってしまうこと、そこから生まれる従業員の孤独感やモチベーション低下、企業の一体感の欠如など、さまざまな課題が浮き彫りになっています。
こうした課題を払拭するために、理念やビジョンを浸透させ企業の一体感を醸成することや、従業員のモチベーションと生産性の向上などを目的として、インナーコミュニケーションの重要性に注目が集まっています。
そこで今回は、インナーコミュニケーションを活性化することのメリットや、社内報をはじめとした有効な6つの施策などをまとめました。
目次
●インナーコミュニケーションとは
●インナーコミュニケーションが注目される背景
・情報共有や部門間の連携に支障
・多様な働き方による人材の流動性
・テレワーク標準化によるコミュニケーションの希薄化
●インナーコミュニケーションを活性化させるメリット
・企業理念やビジョンの浸透
・ 従業員のモチベーションアップ
・心理的安全性のある働きやすい環境づくり
・人材の流出を防ぐ
・ミスの防止と生産性の向上
・企業カルチャーや組織風土の醸成
●インナーコミュニケーションを活性化させる6つの施策
1:社内報
2:チャットツール
3:社内イベント
4:サンクスカード
5:1on1ミーティング
6:オフィス環境の整備
●インナーコミュニケーション活性化させる際の注意点
・中長期的な視点
・複数のコミュニケーション施策の活用する
・従業員の希望を反映させる
●まとめ
インナーコミュニケーションとは
インナーコミュニケーションとは、全従業員が企業と共通の目的意識を持てるように、社内に向けてメッセージを発信したり、従業員の間でコミュニケーションをとったりすることです。
「インターナルコミュニケーション」や「社内広報」とも呼ばれます。
インナーコミュニケーションは、従業員同士の横のつながりとなる身近なコミュニケーションから、経営層と従業員の間での企業理念やビジョンの共有まで、社内を横断するあらゆるコミュニケーションに当てはまります。
具体的には、社内報や社内SNSによる情報共有と社内イベントなどを通じて、企業理念やビジョンを浸透させたり、従業員同士がコミュニケーションを取りやすい環境をつくったりすることです。
組織の一体感を醸成し、従業員のエンゲージメント向上や生産性を高めるためには、部署や役職をまたぐ双方向でのコミュニケーション、すなわちインナーコミュニケーションが重要だと言われています。
インナーコミュニケーションが重視される背景
インナーコミュニケーションが重視される背景として、以下の3つの理由があります。
・情報共有や連携に課題を感じている
・働き方の多様化と人材の流動化
・テレワーク標準化によるコミュニケーションの希薄化
- 情報共有や連携に課題を感じている
HR総研がまとめている「社内コミュニケーションに関するアンケート」によると、回答企業の9割以上が「社内コミュニケーション不足は業務の障害」があると感じている結果が出ています。
また、7割以上が「自社の社内コミュニケーションに課題あり」と回答しており、最も課題を感じる関係として「経営層と社員」のコミュニケーションに悩む企業が多いという傾向が見えています。
こうした結果からも、企業が抱える課題としてインナーコミュニケーションの停滞は見過ごすことができない問題であり、円滑に業務を進めるためにも改善が必要だと重要視されています。
参考記事:HR総研:社内コミュニケーションに関するアンケート2022 結果報告1 - 働き方の多様化と人材の流動化
働き方改革の促進より、テレワークやフレックスタイム制度など、多様な働き方を推奨する企業が増えています。
同時に、ウェルビーイングを実現するため、プライベート重視の働き方を望む人が増えたり、複数の企業で仕事をするスタイルの人が増えたりと、働き方だけでなく仕事の選び方も多様になっています。
また、終身雇用が当たり前だった時代が終わり転職が珍しくない現在では、企業は優秀な人材が社内から流出しないように、自社で働く意義を感じてもらうことが重要になっています。
人材が流動しやすいからこそ、インナーコミュニケーションを活性化し、企業理念やビジョンの共有など、従業員のモチベーションや帰属意識を高める取り組みが必要です。 - テレワーク標準化によるコミュニケーションの希薄化
テレワーク標準化が進み、社員同士のコミュニケーションが希薄化していることが挙げられます。
厚生労働省が発表している調査結果によると、テレワークで感じた課題として「社内コミュニケーションが減った」「上司、同僚とのコミュニケーションが不足する」といった、コミュニケーションの減少に対する回答が目立っています。
リアルで対面する会議や業務の合間のちょっとした雑談をする機会が減ったことから、社内におけるコミュニケーションの量と質が下がっていると感じている人が増えているのです。
インナーコミュニケーションが希薄化することにより、情報共有が滞り、従業員間や部署間での連携が難しくなります。
業務効率向上やモチベーション管理の面からも、インナーコミュニケーションの希薄化は大きな痛手です。
また、直接顔をあわせる機会が減り、誰とも会話せずに働くことに孤独感を感じる人や、メンタルの不調を引き起こす人も増えたため、インナーコミュニケーションに関する取り組みは急務だと言われており、テレワーク下における新しいコミュニケーションの在り方が求められています。
参考記事:テレワークを巡る現状について
インナーコミュニケーションを活性化させるメリット
実際にインナーコミュニケーションが活性化することによって、企業にどのようなメリットがあるのでしょうか。
主なメリットは、下記のような点があげられます。
・企業理念やビジョンの浸透
・従業員のモチベーションアップ
・心理的安全性のある働きやすい環境づくり
・人材の流出を防ぐ
・ミスの防止と生産性の向上
・企業カルチャーや組織風土の醸成
- 企業理念やビジョンの浸透
インナーコミュニケーションを活性化することで、企業理念やビジョンを浸透させることができます。
例えば社内報や社内イベントなどで、社長や経営陣から企業理念やビジョンをメッセージとして伝えることで、従業員への意識付けになります。
意識して働くことで企業理念やビジョンが浸透し、具現化につながるでしょう。 - 従業員のモチベーションアップ
インナーコミュニケーションを促進することで企業理念やビジョンが浸透し、従業員が自分の仕事に意義を感じることができるようになると、従業員のモチベーションが向上します。
従業員のモチベーションが向上することで、一人ひとりが目標達成に向けて自発的に働き成果を出せるようになり、結果として組織全体、企業全体の成果の向上に寄与します。 - 心理的安全性のある働きやすい環境づくり
気軽に社内コミュニケーションができる環境は心理的安全性を作り、従業員が安心して働くことができるようになります。
インナーコミュニケーションが滞り、心理的安全性が低く不安の多い職場環境では、個人のパフォーマンスが発揮できず、結果として企業の生産性も低下してしまいます。
インナーコミュニケーションの活性化は、従業員が力を発揮しやすい環境を作ることにもつながります。 - 人材の流出を防ぐ
インナーコミュニケーションは、人材の流出を防ぐ効果もあります。
働き方の多様化により人材の流動性が高い現代では、従業員に「ずっとここで働きたい」と思ってもらえるかどうかで、離職率が大きく左右されます。
仕事のやりがい、企業理念への共感度、人間関係など、離職する理由は人それぞれです。
しかしながら、退職理由として、職場における人間関係の悪化をあげる人は少なくありません。
インナーコミュニケーション施策から社内コミュニケーションが活性化することで、チームや部署の垣根を越えてより多くの従業員と関わりを持つことができるようになると、良き相談相手を得たり、職場における人間関係の課題解消の一助となるでしょう。
また、前述のようにインナーコミュニケーションは従業員のモチベーションアップにも効果があります。
従業員が仕事に前向きで取り組めるようになり、帰属意識が高まる点からも、人材の流出を防ぐ効果が期待できます。 - ミスの防止と生産性の向上
インナーコミュニケーションが不足すると、情報共有がスムーズに進まなくなることから、指示がうまく伝わらなかったり、食い違いや誤解が生じ、ミスが起きやすくなります。
こうした事態を改善するためにも、インナーコミュニケーションの活性化は重要です。
普段からコミュニケーションがとれていれば、指示も明確に伝わり、食い違いや誤解があってもすぐに気付けるようになり、フォローしやすいチーム作りができます。
結果として、大きなミスやトラブルを未然に防ぎ、業務の効率も上がり、企業の生産性が向上することが期待できます。 - 企業カルチャーや組織風土の醸成
インナーコミュニケーションには、企業カルチャーや組織風土を醸成する効果もあります。
企業理念やビジョン、経営スローガンなどを定めている企業も多くありますが、その背景が理解されなければ、従業員に浸透することは困難です。
社内報などを活用して、くり返し発信し続けることで、企業理念やビジョンを設立した背景やスローガンの意味について、従業員の理解を深める効果があります。
こうした一連の活動を通じて、企業カルチャーが培われていき、組織風土が醸成されていくでしょう。
関連記事:MVV(ミッション、ビジョン、バリュー)を浸透させる方法 〜Web社内報の効果 vol.1〜
インナーコミュニケーションを活性化させる6つの施策
では実際にどうやってインナーコミュニケーションを活性化することができるのでしょうか?
有効なインナーコミュニケーションの施策を6つ紹介していきます。
1:社内報、Web社内報
2:社内SNSやコミュニケーションツール
3:社内イベント
4:サンクスカード
5:1on1ミーティング
6:オフィス環境の整備
- 社内報
インナーコミュニケーションには、社内報も有効です。
社内報は全従業員に情報共有と発信ができるメディアです。
社内報の情報といっても内容は企業ごとに様々ですが、多くの社内報に共通するものとして、経営戦略や企業理念、経営者インタビューや社員紹介など多様な情報が含まれています。
そして社内報は社員全員が読めるメディアであることから、有益な情報をいち早く社内で広めると同時に、一斉にコミュニケーションを取ることが可能で、一体感を生み出す効果も期待されています。
近年ではリモートワークの影響もあり、紙の社内報の配布が困難になりWeb社内報を導入する企業が増えています。
Web社内報の場合、アクセス数などを解析できるサービスを選ぶことで、従業員に人気の記事や、重要なメッセージが読まれているかなどを分析することができます。
いつでも情報発信ができるのでリアルタイムな情報共有が可能です。
動画や音声コンテンツを用いたり、コメントなどリアクション機能を活用して双方向の社内コミュニケーションを活性化できます。
関連記事:6つの目的から読み解く「社内報の役割」とは? - チャットツール
SklackやTemasなどの社内チャットツールを用いることで、従業員同士のコミュニケーションを促進することができます。
意見の交換、伝達事項の一斉共有など、タイムリーな情報共有が可能です。
チャットツールの場合、メールよりフランクなコミュニケーションができるため、仕事の情報共有だけでなく、ちょっとした雑談など従業員間の交流が生まれやすいです。 - 社内イベント
キックオフや全社集会、研修やワークショップなど従業員参加型のイベント、社内表彰制度などさまざまな社内イベントはインナーコミュニケーションには有益です。
普段の業務ではあまり関わりのない人たちと交流できる機会になり、部署や所属を越えたつながりを深めることができます。
これまでは見られなかったような一面を、お互いに知ることができるため、日常とは異なる交流の場はインナーコミュニケーションの施策としてとても効果的です。 - サンクスカード
共に働く従業員に感謝の気持ちを伝えるサンクスカード、サンクスメッセージなどを取り入れる企業も増えています。
日頃はなかなか直接伝えることができないありがとうの気持ちや言葉を形にすることで、人間関係を円滑にし、お互いの信頼感を高め、より良い職場環境を築く効果が期待できます。 - 1on1ミーティング
上司とメンバーが定期的に話をする1on1ミーティングは、直接的にコミュニケーションを増やすことができます。
月に1回、隔週で1回など定期的に実施することをルールとして実施する企業が増えています。
上司に話を聞いてもらうことで、自分が受け入れられていると感じることができるので、心理的安全性の高い職場環境を築く効果も期待できます。
上司がメンバーの悩みや変化にいち早く気付ける機会でもあるので、できるだけ上司は聞き役にまわることが望ましいと言われています。
逆に上司ばかり話す1on1では、メンバーのストレスを増やしてしまいかねないので注意が必要です。 - オフィス環境の整備
テレワークと出社のハイブリッドワークなどをきっかけに、オフィスのレイアウトでコミュニケーションの活性化をはかる企業も増えています。
座席を固定しないフリーアドレスや、従業員がリラックスした会話を楽しんだりできるカフェテリアのようなフリースペースなどを設けることで、一緒に業務をおこなう機会のない部署の人とも話す機会が増え、さまざまな人とコミュニケーションをとることが可能になるでしょう。
インナーコミュニケーション活性化させる際の注意点
インナーコミュニケーションを活性化させることは大切ですが、前述の施策をただ取り入れるだけでは実現することはできません。
インナーコミュニケーション活性化に向けて、以下のような点に注意が必要です。一つずつ見ていきましょう。
・中長期的な視点
・複数のコミュニケーション施策を活用する
・従業員の希望を反映させる
- 中長期的な視点
インナーコミュニケーション活性化には、中長期的視点で取り組むことが大切です。
前述にある施策を行っても、すぐにその効果が出るわけではありません。
効果が出ないからと言って取り組みをすぐに止めたり変更するのではなく、中長期的に行う計画を立てて実施することを意識しましょう。 - 複数のコミュニケーション施策を活用する
さまざまなインナーコミュニケーション活性化の施策がありますが、1つだけ実施するのでは効果が薄い可能性があります。
例えば、社内イベントでワークショップだけをおこなった場合、従業員間のコミュニケーションは深まるかもしれませんが、企業が全従業員に持ってほしい理念やビジョンは根付きにくいです。
ワークショップでコミュニケーションを深めるだけでなく、社内報を活用し企業のビジョンや経営者のメッセージなどを伝えていけば、従業員が共通の理念やビジョンを持ちやすくなるでしょう。
インナーコミュニケーションが最大限に活性化するように、複数のコミュニケーション施策を工夫して活用することが大切です。 - 従業員の希望を反映させる
施策を実施する際は、従業員の希望を反映させるようにしましょう。
例えば、あまり積極的に人と交流することが得意でない従業員の場合、クラブ活動の誘致やスポーツ観戦や旅行などのイベントを実施しても、やや強制に感じてしまうこともあり、効果的とはいえません。
アンケートなどを実施して、従業員がどんなコミュニケーションを望んでいるのかを把握し、自社で働く従業員の意に沿ったインナーコミュニケーションの方法を、複数検討して実施していくと良いでしょう。
まとめ
インナーコミュニケーションとは、全従業員が企業と共通の目的意識を持てるように、社内に向けてメッセージを発信したり、従業員の間でコミュニケーションをとったりすることです。
インナーコミュニケーションを活性化することは、従業員のモチベーションやパフォーマンス向上、企業カルチャーの醸成や組織の一体感を高めることにつながります。
企業や事業の規模が拡大すればするほど、他部署や他拠点、他のグループが何をやっているのか分からない、見えない、という感覚が増えていきます。
こうした状況は従業員のエンゲージメントを下げ、企業への帰属意識も低下する要因にもなるため、コミュニケーションの質と量を高めて改善することが大切です。
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